「辞めようと思ったことは一度や二度ではないです」大変なことやつらいことがあっても何とか歯を食いしばって新卒で入社した会社で40年あまり勤め上げた秀典さん(仮名)。長年の貢献のカタチとしてもらった退職金。「定年退職を迎えたら、退職金で何をしようか」と考えている人は少なくないでしょう。しかし、とんだ誤算もあるようで……。
地中海クルーズのはずが北関東の温泉旅館に…月収52万円で退職金2000万円、60歳まで勤め上げた大手食品メーカー会社員の大誤算とは?妻に懺悔の涙を流したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)


旅行好きの妻に地中海クルーズをプレゼントしたかったけれど…

退職金を受け取れた人たちの約6割が「預貯金」に回し、旅行などの趣味に使っている人は約5人に1人ということです。意外に少ない?

 

――定年退職を迎えたらクルーズ旅行に出かけようか?

 

先ほどの60代の秀典さんはそんな話を妻としていました。秀典さんは大学卒業後、大手食品メーカーに就職し死に物狂いで働いてきました。妻は大学時代から付き合っていた同級生で大学卒業後、大手旅行代理店で働いていましたが第一子の出産をきっかけに退職。それ以来、専業主婦として秀典さんを支えてきました。「辞めようと思ったことは一度や二度ではないです」と語っていた秀典さんがそれでも会社を辞めなかったのは、妻が支えてくれたから。そんな妻への感謝も込めて、二人でクルージングの旅に出ようとあれこれ計画していました。


60歳で定年退職を迎えた秀典さん。退職時の月収は52万円ほどでした。元々旅行好きで大手旅行代理店で働いていたこともある妻が探し出してきた地中海のクルーズ旅行は、決して安いとは言えないものの、長年の労を労わる金額としては高くもなく、退職金と照らし合わせてみても「痛手」とは言えない金額でした。しかし、結局二人で行ったのは自宅から約2時間ほどで行ける北関東の温泉旅館でした。

 

定年を迎え、解放感もありしばらくは舞い上がっていた秀典さん。しかし定年後を考えると生活費が潤沢とは言えない状態に気付きました。秀典さんの現役時代は一人娘の教育費もかかりました。「早めに資産形成をしておけばよかった」と肩を落とす秀典さん。
 

さらによく考えてみると、妻は共働きで働く娘夫婦をサポートするため足しげく娘の家に通っています。同じ都内とは言え、今や妻のサポートに頼り切っている娘一家。長い期間、家を空けることはこのタイミングでは難しい状態でした。

 

落ち込む秀典さんに妻は「何十年も昔の話だけれど、旅行代理店時代、北関東は私の担当だったから懐かしかったわ。それに私たちはまだ60代。健康でさえいれば旅行に行く時間はまだあるわ」と声をかけました。そんな健気な妻に秀典さんは「すまない」と人知れず涙を流すのでした。

 

先ほどの『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2022年3月)』によると、投資経験のある人は54.8%。半分以上の人が投資経験があります。また、初めて投資をした年齢については60代で17.8%と5人から6人に1人です。


 

投資は元本を保証するものではないので、退職金のすべてを投資につぎ込むのはかなりリスクがありますが、FPなど専門家に相談するなど検討してもよいかもしれません。