経済的に依存する母、実家を出るタイミングを逃した長女
自分の学歴にコンプレックスを抱いていたという織枝さん。「親が離婚しているか」とバカにされないためにも、長女・美香さんと次女・美樹さんの教育には全力を注いだといいます。「周囲からは教育に熱心すぎるヒステリックにみえたでしょうね」と織枝さん。塾に行かせるだけの経済的余裕はないし教えてあげられることもできないけど、勉強するように監視はできる……こうして美香さんも美樹さんも見事一流大学に合格。しかも学費も免除されるほど、優秀な成績だったといいます。
――これで私のような人生を歩まなくて済む。そう思いましたね
2人の娘は大学卒業後、就職先も一流。しかし美樹は早々に結婚し、実家を出たそうです。一方、美香は実家から出ることはありませんでした。しかし美香さんいわく、「母の束縛がひどかったから」といいます。
美香さん、新卒時の給与は22万円。手取りにすると18万円ほどでした。すると良枝さんから「私はもう十分働いたから、これからは美香の給与で暮らしていけるね」と仕事を辞めてしまったというのです。
――こんな状態で家を出ていくことはできますか? 当時はそういう言葉がなかったからわかりませんでしたが、今でいう毒親ですね
合同会社serendipityが毒親に関する調査を行った際、世間から毒親と揶揄される行動を並べ、「現在または過去に、自分の子どもに対してしたことがある言動で、思い当たることはあるか」」と説いたところ、全体では47.3%、父親では53.7%、母親では40.9%が「思い当たることはない」と回答。思い当たることでは「言うことを聞かせようと命令や指示をする」が最も多く、全体では25.9%、父親では21.6%、母親では30.1%。続いて「過保護」(全体で22.8%、父親が15.7%、母親が29.9%)、「子どものすることや交友関係、仕事などを把握・管理していたい」(全体が10.7%、父親が6.3%、母親が15.2%)。全体的に母親のほうが毒親になる傾向が強いようです。
美香さんに知らず知らずに執着をしていた織枝さん。その執着から逃れられず、実家を出るタイミングを失い続けた美香さん。しかしそんな生活も20年。かねてから交際していた男性との結婚が決まったとき、織枝さんの言葉に戦慄が走ったといいます。
――新居はどこ? 私の部屋はどのような感じ?
そもそも、美香さん、結婚を機にさすがに実家を出る決心をしていたそうです。しかしこの母親は、結婚後もついてくるつもり満々だ……限界を感じ、ある日、「もう私にかまわないで」と1通のメールを母に送ったあと、新居の場所も言わずに出ていった美香さん。途方に暮れた織枝さん。どんなに連絡を取ろうとしても、美香さんは出てくれません。美樹さんに連絡をすると、「お姉ちゃん、限界が来ちゃったね。毒親を卒業したほうがいいよ」とアドバイス。このとき初めて自分が毒親だったことを知ったといいます。
娘との関係もずっと間違えていたのか……織枝さん、今になって再び、高校くらいは出ていたら、自分に学があったらと後悔しているといいます。
[参考資料]