5年ほど前に世間を騒がせた「老後資金2,000万円不足問題」の影響からか、老後を見据えて「2,000万円の貯蓄」がひとつの目標になっています。しかし、2,000万円の蓄えがあるからといって、老後が安泰かといえば、そんなことはなさそうです。
お前、正気か?〈年金月18万円〉〈貯蓄2,000万円〉の67歳定年サラリーマン、安泰の老後を一気に崩壊させた、大企業で働く「39歳息子のひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

親の援助で住宅購入の場合の非課税措置とは

親に住宅資金を援助してもらうなら、気にしておきたいのは税金のこと。無制限に援助してもらうと贈与税がかかります。贈与税を払うのは受贈者=財産をもらった人です。目安は1,000万円。

 

親や祖父母などから住宅購入や増改築のための資金援助があっても、一定額まで贈与税が非課税となる制度が「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」。上限額は省エネ・耐震性・バリアフリーの住宅であれば1,000万円、その他の場合は500万円となっています。贈与を考えているなら、特例を活用する要件を細かくチェックしておきたいもの。

 

また贈与税そのものの基礎控除を利用してプラス110万円、さらに「相続時精算課税制度」も利用すれば、実際の非課税枠は3,500万円以上となります。将来、不利なことが生じないよう、活用の際にはお金のプロに相談をしたほうが安心です。

 

どちらにせよ、1,000万円の援助を頼まれた井上さん。断ればマンション購入は断念するしかありません。もう大人になった息子はさておき、ただただ可愛い、孫を落胆させてしまう……そう考えると、承諾するしかなかったといいます。

 

老後資金が一気に1,000万円も減ってしまう井上さん。懸念はさらに。井上さんには長男のほか、次男もいます。まだ新婚で夫婦水入らずの生活を送っていますが、いずれ家族が増えれば「そろそろマイホームを」という話になるでしょう。そのとき、長男には1,000万円の資金援助をしたのに、次男にしないわけにはいかない……老後資金は一気にゼロとなり、不安定さはさらに増します。

 

――2,000万円あれば、老後は安泰だと思ったんですけど

 

昨今の不動産価格上昇が、思わぬ形で影を落とす形になりました。

 

[参考資料]

総務省『家計調査 家計収支編』

株式会社不動産経済研究所『首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023 年のまとめ』

国税庁『No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税』