3年ぶりの実家で知った「本当の母の姿」
あれから10年ちょっと。コロナ禍の際にはさすがに「もうだめだ、店が潰れる」と覚悟したといいますが、それも乗り越え、最近は店の経営も順調そのもの。そんなときに訃報がはいります。
美枝子さん、自宅で倒れているところを、訪ねてきた親戚に発見。亡くなってから1週間ほど。死因は不明だといいます。
東京都保健医療局『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和2年)』によると、2020年、23区で自宅で亡くなった人は8,950人。そのうち単身世帯は男性で4,206人、女性が1,890人と、6,000人強が孤独死。年齢別・男女別では、65歳以上の高齢者の孤独死は男性が3,132人、女性が1,594人でした。
海外に渡航したころは、頻繁にメールや電話をしていたといいますが、店が忙しくなっていくにつれてそのスパンは長くなっていき、美枝子さんと最後に話したのは、1ヵ月ほど前。
――「元気?」「大丈夫、元気にやっている」「それならよかった」……それくらいの短いやりとりだったかな
晃さんは葬儀場へ直行。落ち着いてから、母が亡くなった実家を訪れました。3年ぶりの帰省だったそうです。しかしそこで晃さんは大きな後悔に襲われたといいます。ダイニングテーブルに置かれていたのは、母の日記帳。その最後のページに記されていたのは「寂しい、寂しい、寂しい」の三文字でした。
――母は大丈夫が口癖でした……全然、大丈夫じゃなかったみたいです
母の本当の想いを知り、涙が止まらなかった晃さん。
内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果』によると、「自分は取り残されていると感じることがある」と回答した高齢者は22.4%。さらに「自分は他の人たちから孤立していると感じることがある」という回答は21.2%でした。
年齢とともに体の自由が衰えていく高齢者。年をとるごとに外出機会が減り、社会から孤立しがち。孤立死の要因になっています。
[参考資料]