70代前の高齢母を残し、ひとり息子は海外へ
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、ひとり暮らしの高齢者は855万人。2024年、65歳以上人口は推計3,625万人とされているので、高齢者の23.5%がおひとり様です。男女別にみていくと、高齢者男性のおひとり様が35.6%に対し、高齢女性のおひとり様は64.4%。夫婦の年齢差や、男性よりも女性のほうが6歳ほど平均寿命が長いことを考えると、高齢おひとり様女性のほうが圧倒的に多いのは納得でしょうか。
海外在住の橋本晃さん(仮名・55歳)。81歳になる母、美枝子さん(仮名)は、実家で1人暮らしをしています。海外に渡ったのは15年ほど前。大学卒業後、飲食業界で働いてきましたが、ずっと「日本食を海外に広めたい。海外で店を出したい」と考えていたといいます。
そして40歳を前に夢を叶えようと一念発起
――40歳を超えてからの挑戦は難しいと漠然と思っていたので……ラストチャンスでした
農林水産省『海外における日本食レストランの概数』によると、2023年の海外における日本食レストランは、2021年の約15.9万店から約2割増の約18.7万店。地域別にみていくと、アジアでは約2.1万店増、中南米では約0.7万店増、欧州約では0.3万店増。また国別では、中国が7万8,760店、米国が2万6,040店、韓国が1万8,210店、台湾が7,440店、メキシコが7,120店。世界に広がる日本食。もちろんこのなかには、橋本さんのように日本人オーナーの店も。
単身、海外に渡った晃さん。気がかりは、実家で1人暮らしをする母、美枝子さん。
――当時、70歳手前。すでに父は亡くなり、実家で1人暮らしをしていましたが、やはり、高齢の母をひとり残して海外に渡るのは気が引けました
そんな晃さんをみて、喝を入れてくれたのが美枝子さんでした
――大丈夫、ばかにするな。まだ子どもに心配される年じゃない……70歳を前にして、まったく説得力のない言葉でしたけど、母に背中を押してもらいました