高齢者の住まいの選択肢のひとつ「老人ホーム」。その費用は親が負担するのが主流でしたが、昨今は、そうはいかないような状況に。親から子に、費用負担の負のループが始まります。
年金〈月7万円〉の78歳母だったが「驚愕の老人ホーム請求額」に52歳長男、絶句。完全無視の弟妹に「ふざけるな!」と怒り (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の母親、父親もお世話になった「老人ホーム」へ

「久々に大喧嘩をしました」という後藤学さん(仮名・52歳)。誰とケンカをしたのかというと、2歳年下の弟、博之さん(仮名・50歳)と、さらに3歳下の妹、陽子さん(仮名・47歳)。その元凶となるのが、78歳になる母親だったそうです。

 

母親は学さんの自宅から車で1時間程度の離れた実家でひとり暮らし。10年以上前に父親が亡くなってからはずっとひとり暮らしをしていました。

 

何度か同居を持ちかけたものの、子どもたちの家族に迷惑をかけたくないし、気も使われたくないと、断固拒否。「ひとりのほうがラク。気兼ねなく毎日を楽しめる」というとおり、踊りや唄など、趣味を存分に楽しんでいたといいます。

 

雲行きが怪しくなったのは、母の認知症がわかってから。突然警察から「母親を保護した」と連絡があったのです。急いで駆けつけると、踊りの稽古の帰り、最寄りの駅まで来たものの、そのあと、どのバスに乗ればいいのかわからなくなり途方にくれていたとか。そこで交番に駆け込み、長男である学さんに連絡が入ったという顛末。馴染みのある道でも最近はよく迷うということから、病院に連れていくと、予想通り認知症と診断されたのです。

 

それから2年くらいはヘルパーを駆使しながら実家で暮らしてきましたが、いよいよ自宅での暮らしも難しいと感じるように。子どもたち3人で話し合い、老人ホームに入れるのがいいだろうという結論に達しました。

 

実は亡くなった父親も晩年は施設で過ごしていました。

 

――その施設は確か、認知症患者の受け入れもしていたはず……

 

問い合わせてみると、ちょうど空きがあることが判明。スムーズに入所することができたといいます。施設に入所となるとネックになるのが費用ですが、父親がお世話になったときは月18万円程度。父は自営業だったので、年金は基礎年金のみ。そのため毎月10万~12万円ほどの手出しが必要でした。母親の年金は月7万円。榎本さん、父のときと同じように、毎月10万~12万円ほどの手出しを考えていたといいます。