人生の三大出費のひとつ、子どもの教育費。子どもの成長に合わせて段々と増えていくものですが、親の負担は大学進学とともに一気に増え、家計を圧迫します。せめて授業料の安い国公立に……そんな親の期待も意味のないものになってしまうかもしれません。
すまん息子よ、大学は国公立にしてくれないか?「手取り月33万円・46歳サラリーマン」、受験生の息子に懇願も、強い眩暈に襲われたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

私立大の授業料、文系で国公立の1.3倍、理系で国公立の2倍

総務省『小売物価統計調査(動向編)』によると、2023年、国立大学の入学金は文系・理系どちらも28万2,000円、授業料は文系53万8,841円、理系で53万8,859です。

 

公立大学では、入学金は文系が20万6,865円、理系が21万4,428円。授業料は文系54万2,888円、理系53万4,300円です。

 

一方、私立大学の入学金は文系で21万9,481円、理系で23万4,113円。授業料は文系で75万9,376円、理系で110万5,023円。また都道府県別にみていくと、私立文系で一番高いのは「大分県」で100万円超え、理系で高いのは「石川県」で150万円超え。

 

平均授業料だけでみれば、文系で1.3倍、理系だと2倍の差がついています。

 

【47都道府県「私立大学授業料」上位10】

■私立文系

1位「大分県」100万1,219円

2位「滋賀県」89万9,802円

3位「大阪府」88万3,399円

4位「石川県」87万6,385円

5位「山梨県」85万9,841円

6位「北海道」85万4,223円

7位「京都府」83万9,976円

8位「東京都」82万9,924円

9位「兵庫県」82万5,254円

10位「静岡県」82万0,176円

 

■私立理系

1位「石川県」151万5,000円

2位「和歌山県」144万2,000円

3位「三重県」140万0,000円

4位「大阪府」136万6,294円

5位「滋賀県」129万8,746円

6位「京都府」129万5,470円

7位「静岡県」128万4,246円

8位「神奈川県」123万2,255円

9位「広島県」122万3,793円

10位「山形県」122万0,000円

 

また国立大学の授業料は、2020年に53万5,800円から53万8,841円に値上げとなりましたが、以降は一定です。

 

一方で私立大学の場合は、毎年、段階的に値上げ。たとえば私立文系では、2015年4月700,636円だったのが、1年後には70万5,065円と5,000円アップ。その翌年には70万7,197円と、2,000ほどアップ。このような値上げが繰り返され、気づけば10年で5万円ほど値上がりしています。

 

このような状況、お金を出す親としては「国公立大学に行ってくれると嬉しい」というのが本音です。

大学は学費の安い国公立に…親の期待が泡と消える!?

来年、長男が大学受験を控えているという榎本孝さん(仮名・46歳)。ほか年子で2人の子が立て続けに受験に挑むそうで、「これから数年間は地獄のような日々が続く」と苦々しい顔をしています。

 

――全員、希望しているところにいけたらいいと思うけど、親としては気になるのが学費ですよね

 

榎本さんの月収は43万円、手取りにしたら月33万円ほど。また賞与も含めた年収は750万円ほどだったといいます。過去形だったのは、業績不振で、今年は賞与が3割ほどダウン。年収は700万円を割り込む程度になる予想だといいます。

 

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマン(平均43.6歳)の平均給与は月収で36.3万円、年収は596.9万円。榎本さんと同じ40代後半では月収40.6万円、年収670.98万円。榎本さん、平均的なサラリーマンよりは高給であるものの、子どもの教育費がぐんとあがるタイミングでの年収ダウンは相当苦しいよう。

 

――大学は国公立以外は認めん! と息子たちに半分冗談、半分本気でいったんですが、私の状況を知ってかどうかわかりません。しかし「大丈夫、学費の高いところは受けないから」と返されました。親として何とも情けない話です

 

ただ国公立大学であれば学費が安く済む、という親の思惑にどうやら暗雲が立ち込めています。東京大学は2025年度に入学する学部生から授業料を2割値上げの年間53万5,800円から64万2,960円にする方針を明らかに。同時に全額免除の対象を拡大するといいますが、ほかの大学でも授業料の値上げの議論が活発化しているという話も。

 

国立大学の授業料は文部科学省の省令で標準額が決められていて、最大20%増額できます。この標準額は2004年の国立大学の法人化により導入され、2005年に53万5,800円にあげられてからは20年間据え置きのまま。昨今の物価高の流れを考えると、20年前に決められた金額を基準にしろというのも無理な話なのかもしれません。

 

給与が思うように上がらないなか、教育費が急激に増大する日が迫っている榎本さん。「少々眩暈がします」と国立大学の授業料値上げのニュースは結構なインパクトだったよう。一方で、昨今、給付型、つまり返済のない奨学金は拡充傾向。また授業料値上げのニュースが駆け巡った東京大学では、授業料全額免除の対象を世帯年収600万円以下と拡大したり、900万円以下の学生についても個別の事情に応じて授業料を一部免除にしたりなど、家計の苦しい学生への支援策を拡充する方針。

 

[参考資料]

総務省『小売物価統計調査(動向編)』