従業員が自分の能力を100%発揮し、より生産性を高めることも可能となる「心理的安全性」。国際社会では当たり前のように、心理的安全性が高い環境で仕事をしています。一方で、日本の組織は心理的安全性が低いと指摘されています。本記事では、野口雄志氏の著書『最大の成果をあげる心理的安全性マネジメント 信頼関係で創り上げる絶対法則』(ごきげんビジネス出版)より、一部抜粋・再編集し、日本の組織が心理的安全性を高める方法について解説します。
自分は歯車にすぎない…「同調圧力」によって日本人サラリーマンが失う「大事なもの」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「アメリカの個人主義」と「日本の同調性」

アメリカの社会は、一般的に「個人重視の社会性」を特徴とします。これは、個人の権利や自己実現、自己主張が重要視される社会的な価値観や文化的な傾向をあらわします。

 

このような社会が成り立つ理由としては、個人が自分の能力を最大限に発揮することで、自身の喜びにつながるとともに、個人が夢や目標を達成することの喜びにもつなげられるからです。多様性と異質性を尊重する社会でもあり、それぞれが育ってきた文化、バックグラウンドをもち、それを誇りにさらに努力しようと考える傾向があります。そこにはさまざまな生き方や意見の人がまわりに存在し、それを容認する社会ができています。

 

日本の場合は近年の傾向として、個人を消して組織の存在を重要視することに重きを置く社会的な構造や価値観があるのです。これが時として同調圧力を起こし、同調主義ともいえます。考え方の違いは、人が集う場面で大きな違いとしてあらわれてくるのです。残念ながら、日本社会で同調性の弊害はいくつか挙げられます。

 

日本の同調性による弊害

まずは、個人の発言が抑制されることです。個人が異なる意見や批判的な意見を述べることが難しい状況が生まれることがあります。とくに上下関係からの圧力によって、意見がいえない環境ができてしまうのです。これでは新しい発想でのアイデアや改革に向かう力が抑制されることになります。新しい意見やアイデアが抑制されることは、個人としても組織としても挑戦できなくなり、モチベーションがなくなってきます。常に決められたことをくりかえす動きは、時としてマンネリ化にもつながり、結果や成績に大きな向上が見られなくなるのです。そこに集う人たちも常に指示に従って動く歯車的な感覚になり、個人の喜びを感じなくなるのです。

 

このように、個人主義と同調性では心理的安全性を語り、つくり出す場面では大きな違いがあります。それぞれを理解しながら、どちらの国でもワクワクした働き方ができる組織をつくることを目標とします。