久々の大学の同窓会…「働かない同期」に場が凍る
教えてくれたのは田中康孝さん(仮名・49歳)。先日、大学時代のサークルで同期だった友人たちとの飲み会があったといいます。集まるのは10年ほどぶりで、10人ほど集まったとか。それは海外赴任から10年ぶりに帰国という同期がいたため「久々に集まろう」と企画されたもの。同期はみな、金融、マスコミ、メーカー、公務員など、さまざまな業界で頑張っているといいます。
――ちょうど我々は就職が大変な時期でしたから。そのぶん、せっかく頑張って入社できた会社だから、という意識も強いのだと思います
最初はやはり、仕事や家庭の話が中心でしたが、参加者のなかに「未婚で無職」という同期がいることがわかると、あまりに珍しいケースだと話題の中心に。
――Aは最初、教育関連の会社に就職したんですけど、3年くらいで辞めてしまって。そこからはあまり連絡を取り合っていなかったのですが、まさかいまも無職のままとは
Aさんは東京生まれ、東京育ちで、実家は世田谷。両親は共働きと聞いていたので、確かに無職となってもそこまで焦る必要はなかったかもしれません。「あの時代に仕事を辞められるのも、恵まれた環境だから、と少し嫉妬を覚えた記憶がある」と田中さん。ただ話を聞いていくと、ただただ驚くばかり。
・父親はすでに他界し、実家で母親(72歳)と二人暮らし
・母親は現在、清掃の仕事(時給1,300円)を中心に仕事をし、家計を支えている
「月収にすると20万円ほどになるから、大人2人で暮らすには十分」とAさん。それに対して、友人らは呆れながらも「お前も働けよ」とツッコミを入れると、「俺、一生働くつもりないもん」というものだから、一瞬場が凍ったといいます。
――50歳を前にした大人がいう言葉なのかと……戦慄が走りましたね
確かに氷河期世代のなかには、想像を絶する思いをした人たちもいます。就職できずに、それでも社会に出なければいけない人たちも大勢いました。また就職できても希望した仕事ではなく、無理して働いた結果、心を病むケースも珍しくありません。そう考えると、Aさんがせっかく就職した会社を辞めてしまった事情も察します。しかし、時給1,300円のバイトをする母親に全面的に頼りきるのは、自身の老後を見据えると不安ではないのでしょうか。
――親父の遺産もあるし、母親がいなくなっても住むところに困らないといいますが、ちょっと理解不能です
総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』によると、ひとり暮らしの高齢者の1ヵ月の支出は平均14万円。単純に年金がもらえる65歳から30年間、老後が続くとすると、5,040万円を必要とします。国民年金保険料を親が払っているとして満額受給できれば、2,800万円程度、目途がついていれば、確かに働かなくても生きていける見通しが立ちます。
――それでも長い人生、何があるかわからないので、仕事をしないというのは私は不安で仕方がありません。同じ状況でも、働かないという選択肢は私にはないですね
[参考資料]
国立社会保障 人口問題研究所『第16回 出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)』
総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』