65歳元部長…勤続42年で会社を去る
多くの企業が60歳を定年年齢としながらも、継続雇用で定年以降も働ける環境が整う昨今。実際に何歳まで働くかは個人に委ねられているため、「いつ仕事を辞めるのか」は以前よりも決断のいるものになっています。
60歳以上を対象に行った内閣府『高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上の就労希望年齢として最も多いのが「65歳くらいまで」が25.6%。「70歳くらいまで」が21.7%、「75歳くらいまで」が11.9%、「80歳くらいまで」が4.8%。また「働けるうちはいつまでも」が20.6%、「仕事をしたいと思わない」が13.6%となっています。
定年を迎えたから、もういいかな……という人は1割強といえるでしょうか。なかなか定年で仕事が辞められないのは、年金受給開始までの空白があるから。現状、老齢年金の支給開始は65歳。もし60歳で仕事を辞めれば、5年間の無収入の期間が生まれます。仮に月30万円を支出する家計であれば、1年で360万円、5年間で1,800万円が必要となります。無収入ということは、それだけのお金がただ減っていくだけということ。どんどん減っていく貯金通帳を眺めるストレスを考えると、「あと5年は働こうかな」と考えても不思議ではありません。
伊藤浩二さん(仮名・65歳)は、再雇用期間含め42年間、大学卒業後就職した会社を勤め上げました。
――定年以降の5年間が特に大変でしたね
50代には部長まで昇進したものの、60歳で定年と共に契約社員に。働くモチベーションが上がらない時期もありましたが、定年以降の5年はこれまでの経験を後輩たちに還元する期間だと思い、頑張ってきたといいます。
退職の日、同じ部署の仲間はもちろん、かつての部下も駆けつけてくれ、盛大に送り出してくれたといいます。
――自分のやってきたことが全部報われたと感じて、目頭が熱くなりました
余韻に浸りながら帰宅の途についた伊藤さん。これからはゆったりとした時間だけが過ぎていきます。