誰もが避けては通れない「親の介護」。特に父や母がひとり実家で1人暮らし、という局面になったとき、「介護のために同居」ということも視野に入るでしょう。そのとき、結婚しているなら配偶者の同意というハードルを越えられるかどうかが、カギになるのはいうまでもありません。
今夜、話したいことがあるんだ…「月収45万円・56歳サラリーマン」、82歳要介護の母との同居を相談も〈妻の思わぬ反応〉に戸惑いのワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

要介護の母を呼び寄せて同居…最後のハードルを越えようと

母との同居にあたり、最大の障壁は妻への説得。母と妻は昔から折り合いがよいとはいえず、自宅が近いとはいえ、きちんと顔を合わせるのは盆と正月くらい。結婚して20年強、絶妙な距離感を保ちながら今日までやってきました。

 

義母と同居……果たして、どんな反応をするか。なかなか相談する機会をもてずに2週間。きょうだいからもせかされる小池さん。ある日、意を決して妻に「今夜帰ったら相談したいことがあるのだけど」とラインを打ったといいます。返ってきたのは「しょうち」のみ。

 

重い足取りで帰宅し、夕食前に妻から「で、相談ってなに?」と話をふられると、思い切って話し始めた小池さん。

 

――母さんと同居したいんだ

――別にいいわよ

――えっ!?

――介護が大変なんでしょ、行ってらっしゃい。応援しているわ

――え、えっ!?

――実は心配していたの。お義母を呼び寄せたいと言い出すかと

 

小池さんの妻は、実際に義母を呼び寄せることになったらバリアフリーのリフォームは必須だが、住宅ローン返済が残っているなか、月収45万円ほどの小池さんの給与では難しいと冷静に分析。そんな展開になったあとで、「母さんを呼び寄せて一緒に住みたい」と言い出しにくく、小池さんが介護のために実家に戻るという話の展開に。またそのことをきょうだいに話すと、「環境が変わらず、母さんも喜ぶのでは」と大賛成。流されるままに、半ばやけくそになりながらも実家に戻ることになったといいます。

 

要介護とはいえ、排泄や入浴の際には見守りが必要であるものの、日常生活はほぼ母ひとりでOK。小池さんは週末に掃除や洗濯をまとめてするほか、食事は基本的に母親が担当。久々に母親の手料理を存分に楽しんでいるとか。「同居なんて大袈裟な」という母親もどこか嬉しそうで、思わぬ親孝行になっているとか。

 

また、たまに小池さんの妻も様子を見に訪問。ずっと折り合いが悪いと思っていましたが、嫁姑、お互いに丸くなったのか、意外にも話が弾んでいます。小池さん、「すべて妻に仕組まれたのでは……」と疑心暗鬼になっているといいます。

 

[参考資料]

厚生労働省『中高年者縦断調査』

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』