公的年金が家計ベースとなる高齢者。依存度が高ければ高いほど、生活に困窮。明日さえも見えなくなるなか、ある日、日本年金機構から届く「緑色の封筒」があります。「郵便物なんて、まとめてポイっ」という人でも、これは開けるべき封筒です。
時給1,200円で働いていた「69歳おひとり様男性」、手足のしびれで失業。生活苦のなか日本年金機構から届いた「緑色の封筒」に救われたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

生活に困窮する高齢者のもとに届く「緑色の封筒」その中身は?

職を失い、年金が頼りの生活に突入。いろいろとありつつも保険料だけはきちんと払ってきたという田中さん。

 

――世話になった先輩が、苦しくても払っておいたほうがいいといってくれたから

 

しかも知らず知らず、年金の繰下げとなり、田中さんの年金は30.1%増額。月6.8万円の老齢基礎年金は月8.8万円に。「先輩のいっていることを守ってよかったよ」というものの、これで十分暮らしていけるかといえば、なかなか難しいといいます。

 

田中さん、生活保護という手もありますが、「生活保護は絶対受けたくない」と断固拒否。田中さんが暮らす、東京のとある市の生活保護費をみていくと、生活扶助基準額が7万6,880円、家賃にあたる住宅基準額は5万3,700円。合わせて13万0,580円。これだけあれば、日本国憲法でうたっている、健康で文化的な最低限の生活は送れるということになります。

 

それを5万円ほど下回っている田中さん。少なくても申請が通れば、生活は今よりも十分楽になるはずです。実は田中さん、かなり昔の話、生活に困窮し、生活保護の申請を考えたことがあるといいます。しかしこのとき「働けるようなので、働いてください」とピシャリといわれたとか。そんな経験から、手足のしびれで働くのが困難なのにも関わらず、「働けますよね」といわれそうで怖い、という理由で生活保護の申請を躊躇っているのです。

 

――毎日、生きるだけでも大変ですわ

 

こんな生活があと何年続くのか……気が遠くなっていたころ、郵便ポストに1通の封筒。宛先は日本年金機構。緑色の封筒に入っていたのは、年金生活者支援給付金請求書。年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の人に対し、生活支援を図ることに目的として、年金に上乗せして支給されるもの。老齢基礎年金を受給されている対象者には「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」が支給されます。

 

支給要件は「①65歳以上の老齢基礎年金の受給者」「②同一世帯の全員が市町村民税非課税」「③前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が88万9,300円以下

 

*昭和31年4月1日以前に生まれの場合は88万7,700円以下

 

給付額は最大月5,310円、1年間で6万円ほどです。厚生労働省によると、令和5年3月時点、「老齢年金生活者支援給付金」の受給者数は460万6,538人で、平均給付額は3,930円。補足的「老齢年金生活者支援給付金」の受給者数は102万8,903人で、平均給付額は2,077円でした。

 

月最大5,000円ほど、年間6万円ほどのプラスαで、生活がどうにかなるわけではありませんが、請求さえすればもらえるお金。田中さん「わずかな金額でも本当に救われます」と手を合わせます。

 

このことがきっかけになったのかどうか、分かりませんが、相談員のアドバイスのもと、生活保護の申請も考えているといいます。

 

[参考資料]

総務省『統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-』

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』

厚生労働省『年金生活者支援給付金制度について』

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』