「姻族関係終了(死後離婚)」の件数が増えています。これは、死別によって元配偶者の親族との法的関係を解消する手続きを意味しています。こうした手続きを選択する背景には、どのような事情があるのでしょうか。本記事では、2つの事例とともに「姻族関係終了」のメリット・デメリットについて、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
愛する亡夫の墓参りはこっそりと…「死後離婚」は「義父母」だけが原因じゃない。58歳嫁が最も怯えた、年金90万円・65歳無職の義兄【CFPの解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

姻族関係終了後を想定して、判断は慎重に

「死後離婚」といわれると、亡くなった配偶者と離縁したいわけではないのに……と、抵抗を感じる方も少なくありません。姻族関係終了について以下のとおり、まとめてみました。

 

〈離婚姻族関係終了の手続きのポイント〉

・届け出に同意は不要。

・相続や遺族年金の受給に影響がない。

・子どもと義父母達との血縁関係に変更なし。

・戸籍に記載されるが、通知されることはないので黙っていればわからない(結婚前の姓に戻すのは別の手続きによる)。

 

〈メリット〉

1.心の負担が軽くなる:義理の両親や兄弟との関係にストレスを感じている場合、心の負担を軽減できる。

2.経済的負担の回避:将来、扶養(介護)の経済的負担を避けられる。

3.新しいスタートを切れる:再婚を考えている場合など、新しい生活(関係)を始める前に、過去の関係を整理できる。

 

〈デメリット〉

1.取り消し不可:状況が変わっても、一度提出した姻族関係終了届は取り消しできないため、慎重に判断する必要がある。

2.家族関係が新たに変化する可能性:一部でも良好な関係の親族がいる場合、法的に縁が切れたことを知られるとギクシャクするかもしれない。

 

子どもと義実家との関係に影響するかもしれないので、子どもには事前に相談しておくほうがよいでしょう。また、法事などで義父母・兄弟姉妹と顔を合わせる際、気まずいかもしれません。姻族関係終了は、自身の生活設計(住まい、お墓)などとあわせて、慎重に判断することが重要です。

 

<参考>

※法務省「戸籍統計」

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003322640

 

 

伊藤 江里子

FP事務所 夢咲き案内人オカエリ 代表