年金が最大約2倍の「年金の繰下げ受給」…デメリットは?
学校を卒業し社会人に。多くの人は年齢(経験)と共に給与が増えていく経験をします。しかし順調に収入が増えていくという当たり前は定年まで。ここで多くの人が給与減を経験したり、現役引退であれば無収入になったり。ここで誰もがその先にある老後に対して不安をさらに募らせるもの。
そこでの対応策はさまざま。「働けるうちは働こう」と考える人、お金を増やそうと投資にチャレンジする人……なかには年金を増やそうと工夫する人も。
年金受取額を増やすことができるのが「年金の繰下げ受給」制度。これは原則65歳から受給開始となる老齢年金に対するもので、希望して66~75歳の好きなタイミングから受給開始とするもの。1ヵ月受け取りを遅らせるごとに0.7%ずつ年金は増額。1年遅らせて66歳から受給開始とすると、年金は8.4%増額。2年遅らせて67歳から受給開始とすると16.8%増額。3年遅らせて68歳から受給開始とすると25.2%増。6年遅らせると50.4%と1.5倍に。最終的に10年受給開始を遅らせて75歳になってから受け取り開始となると84.0%増と、ほぼ2倍にもなるのです。
――年金受取額が増えるなら、お得じゃないですか
と誰もが年金の繰下げ受給を選んでいるかといえば、そうではありません。年金の繰下げ受給にはメリットの一方でデメリットも。
まずは、年金の総受取額によっては損をする可能性があるということ。つまり、どんなに月の受取額が増えたところで早死してしまっては、65歳から受け取り開始としたほうがお得ということです。
また月の年金額が増える=収入が増える、ということは、税金や社会保険料の納付額が高くなる可能性があるということ。つまり現役時代、給与の額面と実際の手取り額をみてがっかりとしたあの経験を、年金でもするというわけです。
さらに加給年金や振替加算は受け取れない可能性があるということ。加給年金は厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳到達時点で、その人に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されるもの。振替加算は加給年金の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、それまで夫(妻)に支給されていた加給年金は打ち切りとなりますが、このとき妻(夫)が老齢基礎年金を受けられる場合には、一定基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算されるというもの。繰下げ受給を選択することで、これらの加算を受け取れないというのです。
これらのデメリットも加味してもなお、月々の年金額が増えるほうがいい、と判断するのであれば、繰下げ受給を選んでも後悔はないかもしれません。