8月に世界的な株価暴落がありましたが、自分の資産運用がこのままでいいのか不安になり、売却してしまい損をした人もいたのではないでしょうか。日本も投資しやすい環境・制度が整い始め、投資をスタートする人が年々増加している一方、投資の知識やノウハウを得ないまま「ほったらかし投資」をしている人も多い印象です。日本や世界の経済が目まぐるしく変化している今こそ、資産を大きく減らさない資産配分が重要となってきます。本記事では、FPの金子舞氏が、資産配分の見直し方法を再確認し、資産を守っていく方法をお伝えします。
相場急変時に「怖くて売ってしまいました」は悪手…暴落が起きても慌てないためにするべきこと【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

2.リスク許容度を判断する

今回のAさんが一番見落としてしまったのが、「リスク許容度」です。リスク許容度とは、投資をする際どのくらいの価格の動きまで受け入れられるかを表したものです。特に運用成績がマイナスになったとき、どれぐらいの下落まで耐えられるかが重要です。

 

「投資で年〇%くらい増やしたい」という人が多い一方で、「投資元本が〇%以下に減ったら支障が出る」というボーダーラインを意識している人は少ないのではないでしょうか。お金を増やすために投資をしていると増やすことに注目してしまいがちですが、本来大事なのは、持ち続けられるリスク許容度のなかで投資をすることです。

 

これは投資歴や知識、性格なども関係しますが、この許容度を超えた人が暴落に耐えられず手放して損をしてしまいます。投資に詳しい人がおすすめしていた商品だからと、よく内容もわからず購入する人がいますが、リスク許容度を超えているケースが少なくありません。

 

たとえばAさんの場合、分散投資に向いているということで投資信託を購入していましたが、株式で運用している投資信託ばかりを保有していたので、株価暴落の影響を大きく受けて連日値下がりしました。

 

これは「分散投資している投資信託を買えば、安定的に増える」と記事を見て、投資信託ならどれでも着実に増えると思い購入してしまった結果です。しかし中身は株の集まりなので株がメインの資産配分となり、連日の下落が続き、怖くなって売ってしまったのです。

 

自分が安定的に増やしたいのか・バランスを見て増やすのか・収益に特化したいのか、どのタイプかを冷静に見極め、自分のリスク許容度を過信せず、投資商品を選んでいきましょう。

 

3.状況に応じて資産配分を変える

自分の状況はもちろん、周囲の環境や日本、そして世界の状況は刻一刻と変わってきています。そのなかで、ひとつでも前提条件が変われば、資産配分も見直す必要があります。

 

一般的に年齢が上がるほどリスク許容度が低くなりますので、段階的に資産配分を安定志向に変えたほうがいいでしょう。ただし、その人の資産状況や働き方などによって、安定資産に変える配分割合も変わってきます。

 

例えば、ある程度の年齢まで収入があるのであれば、リスクを負っても利益を重視する=攻めの投資でもいいですし、反対に手元に現金化できる資産が少ないのであれば、安全を重視する=守りの資産を持つ方がよいでしょう。

 

また、当初は理想の資産配分にしていても、そのままにしておくと価格が上がりやすい株式の割合が増えて、想定以上にリスクが大きくなるケースがあります。理想の配分に戻すために、増えた分を売却したり増やしたい分を購入したり調整してみてください。例えば、株式メインで保有している人であれば、少しずつ株式を売却して債券などの商品を購入する、または株式は売却せずに別の資産で債券などの商品を購入するといった戦略も有効です。

 

一般的に売却より新しい資産を購入し調整するほうが税金や手数料の面で有利ですが、状況に応じて対応してみましょう。日本の年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、必要に応じて割合を変更しています。

 

「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、あくまで投資商品は木なので、資産全体の森として割合を考えていきましょう。

資産を守りながら増やし続ける資産配分を確立しよう

資産運用において何より重要なのは、資産を減らさず守ることです。そのうえで増やすアクションをしていくために、守りと攻めのバランスを適宜修正していく必要があります。

 

守りすぎても資産が増えないし、攻めすぎると資産を減らすリスクが高くなるからこそ、最大の効果をもたらす割合にしていきましょう。今後もさまざまな要因で、暴落は必ず起こります。そのときに慌てて狼狽売りをしないためにも、目的を忘れずリスク許容度を過信せず、状況に応じて持ち続けられる資産配分で投資していきましょう。

 

 

金子 舞

ファイナンシャルプランナー