国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、年収1,000万円超の人の割合は全体の6%程度。残りの94%の人からみれば、羨ましい限りですが、そんな高収入の人であっても、老後の不安はつきないようで……。本記事では近藤さん(仮名)の事例とともに、バブル前の日本を知る世代へのマネープランにおける注意点について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
「贅沢していないのに…」年収1,000万円の55歳・大手企業部長でも…老後資金が一向に作れず、不安で息つく暇もない理由【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

経済の低成長が招いた「お金の価値」を意識しない世代

日本では、1970年から1990年代まで高度成長期であり、国が大きく成長してきた時代です。このときには、お金のことを気にすることなく、働いていれば収入が増え、豊かになると思われていました。その背景には、インフレがあります。このころには、住宅ローンは「限度額いっぱいまで借りておけばいい」といわれることがあったそうです。なぜなら、住宅ローン金利が高くても、収入が増える方が上回ることで、毎月の実質で考える返済は少なくなっていくからです。

 

また、普通預金や定期預金に預けておくだけで、数パーセントの利息が付くので、積極的に資産運用をするということを考えなくても、銀行に預けておけばお金が増え、収入も増えるのでさらに貯蓄もできるという、いまでは考えられないような時代だったのです。

 

ただ1990年以降、バブルがはじけて日本は低成長期時代に入りました。預金金利もどんどんと低くなりました。そんな時代が変化していくなかで、人々の意識はなかなか変わらず、お金のことを考える人も少なかったのかもしれません。今回の近藤さんも、そのなかの1人だといえます。

 

近藤さんへのアドバイス

今後の生活について、現在の職場の定年退職は60歳。しかし雇用延長で65歳までは働けるため、働けるうちは働いて収入を得ること。もうすぐ長女も卒業する時期となるので、支出が減る分を貯蓄に回し、生活費も抑えるよう工夫することをアドバイスしました。特に、今後の老後の生活水準は、現役時代の水準から急に落とすことができないので、年金生活になっても問題なく暮らせるよう、いまのうちから生活水準を考えるべきでしょう。

 

職場には2000年から企業型の確定拠出年金が導入されていましたが、ほとんどが定期になっていました。そこで、もう少し積極的な運用に変更(株式の割合を増やす)や、自分たちで貯蓄する分も少額投資非課税制度(NISA)を活用することなども提案しました。

 

近藤さんは「投資はやったことがないので不安」といいます。同じように、未経験である投資に不安を抱く方は多いでしょう。そうした方は、専門家などから定期的に面談等でアドバイスを受け、不安を解消できるよう、そのときどきの状況を確認しながら、資産形成していくことをお勧めします。

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表