義親の介護「お金足りず」子世代が肩代わり
内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』によると、老後の生活設計のなかで「全面的に公的年金に頼る」は26.3%。さらに「公的年金を中心とし、個人年金や貯蓄などを組み合わせる」(53.8%)と合わせると、9割弱が老後の生活において年金を中心に見据えています。
大手メーカーで働く森浩一さん(仮名・57歳)もそのひとり。月収60万円、賞与も含めた年収は1,000万円を超えるといいます。また毎年、誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」によれば、65歳から受け取れるのは月18万円程度。さらに共働きの妻は月15万円程度受け取れる予定。夫婦合わせて年間400万円弱の年金を手にできる計算です。
老齢厚生年金受給者の平均年金受取額は、65歳以上の男性で月17万円、女性で10万円ほどなので、夫婦で平均以上の年金を手にできる森さんの老後は何の心配はないように思えます。しかし、森さんの表情はさえません。
――このままでは「老後破産」もありえる
夫婦で年400万円の年金を受け取りながらも老後破産してしまっては、世の中の高齢者のほとんどが破産してしまいます。一体、どういうことなのでしょうか?
――妻が退職しました。親の介護で……
3歳下の妻の父親に続き、母親も要介護に。妻は「仕事と介護の両立は無理!」と退職を決断したといいます。自己都合の退職でしたが、それでも600万円ほどの退職金を手にすることができ、それによって貯蓄(世帯)は2,000万円ほどに。一時期、「老後、夫婦で2,000万円ほど不足する」と話題になりました。「妻が退職」という想定外があったものの、すでに貯蓄は2,000万円の大台に。老後破産とは無縁に思えますが……。
実は、義親の介護にあたり、義父や義母の貯蓄や年金だけでは足りず、森さんが毎月20万円ほど負担しているのだとか。年間250万円近い負担。5年で1,250万円、10年で2,500万円……いつまで続くかわからない義親の介護に、絶望すら覚えます。今後、森さんの母親(父親はすでに死去)の介護問題に直面する可能性もあります。母親の年金や貯蓄で何とかなればいいのですが、それでも足りなければ、また森さんが負担するしかありません。
そこに来て、妻の介護離職。痛すぎます。森さんの妻の年金受取予想額も、あくまでも定年まで働いたら受け取れるだろうという金額。5年以上も早く退職したことで、月1万5,000円~2万円ほど減る予想です。