老後の生活を考えるうえでも重要なのが年金。夫婦共働きであれば、受取額も十分で、何の心配もなさそうに思えますが、絶対安心というわけではなさそうです。
年金「夫婦で年400万円」と安心していたが…月収60万円・大手メーカー勤務の57歳サラリーマン「貯蓄2,000万円」でも老後破産に直面する絶望的理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成のラストスパート時期の50代後半で「親の介護」という想定外

子育てがひと段落したばかりだったという森さん。自身の老後に向けて、資産形成のラストスパートというタイミング。そこに来て「親の介護」という予想もしなかった出費で、資産形成はストップ。さらには子の預貯金を取り崩す、という事態にまでなれば、親の介護が終了したのと同時に破産という結末も。

 

これまでよくいわれてきた「老後破産」の原因としては、「収入減も生活費の見直しをしていない」「医療費と介護費用負担の増加」「高齢者になっても残る住宅ローン返済」など。自身に原因があるので、対策のしようがありました。しかし「親介護」は事前の対策が難しいもの。

 

――介護が必要になったら……お金、ある? 大丈夫?

 

そんな万が一のことは、本人には話しづらいもの。初めて実情を知るのは、「親の介護」に直面したあとで、そのときにはどうしようもない……というのも、よくあるパターンなのです。また介護が必要、でも経済的に費用を工面するのが難しいという親に対して、「自分たちの老後が不安だからサポートはできない」といえるかといえば、難しいもの。むしろ「最後の親孝行」と、多少の無理をしてしまうケースも珍しくないようです。

 

予想が難しい「親の介護費用の負担」ですが、夫婦共働きなら、対策なしでいたとしても、何とかなりそう。しかし介護離職となると、一気に状況が悪くなります。

 

厚生労働省『令和5年度 雇用動向調査』によると、2023年に個人的理由で離職した人は591万人ほどで、そのうち「看護・介護」を理由に離職した人は約7.3万人でした。また男性・女性ともに50代が最も高くなっています。まさに「よし、これから資産形成のラストスパート」というタイミングで、「親の介護」という大問題がふりかかってくるわけです。

 

たとえ、前途洋洋の老後が見えていたとしても、一気に崩壊を招く原因となる「親の介護」。万が一のことは聞きづらいことではありますが、親子共倒れを防ぐためにも、親子で十分に話しておく・確認しておくことが、対策の第一歩になります。

 

[参考資料]

内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』

厚生労働省『令和5年 雇用動向調査』