高齢者では8割は持ち家ですが、「自宅で暮らすのもしんどい」と、住み替えを検討する場合も。そこで有力な選択肢となるのが老人ホームです。しかし「ここなら最期まで……」と決めたホームでも「ちょっと違った」ということはあるようです。
もう、我慢できません…年金15万円・75歳女性を憔悴させた「老人ホーム」でのまさかの苦痛「こんなはずでは」 (※写真はイメージです/PIXTA)

見学もして、試食もしたホームだったが…

中島美智子さん(仮名・75歳)も住み替えで、有料老人ホームに転居したというひとり。3年前に夫を亡くし、戸建てで1人暮らし。造りの古い自宅は階段が急で、転げ落ちないか、心配だったといいます。

 

――このまま住み続けるにしても、リフォームは必須

 

そう思っていたところ、老人ホームという選択肢が急浮上したといいます。雑誌の老人ホーム特集で、これまで抱いていたホームへの印象がガラリと変わったのです。

 

――いまどき、健康な人で入れるところも多いのね

 

中島さん、老人ホーム=介護が病気の人が入るところ、というイメージがあったそう。もちろんそのような施設もあるものの、昨今は介護等必要としない自立の人も入れる施設が次々に誕生。高齢者の住まいのひとつのカタチとして広く知られるようになっているのです。

 

興味本位で老人ホームの見学にいったところ、それは雑誌で見た以上。「もはやホテルね……」そんな豪華なホームもあったとか。ただそのようなホームは費用も高額だし、身の丈にあっていない。

 

――年金月15万円程度の私でも余裕のホームがいいわ

 

こうして見つけたホームは、新しくできたばかりで、設備はピカピカ。何よりも試食させてもらった食事が中島さんの口にピッタリあったそう。「ここなら死ぬまでいられそう……決めた!」と入居を決断。自宅を売却し、入居費用に充てたといいます。

 

しかし中島さんの我慢は初日から。

 

――初めて集合住宅(的なところ)に住むのですが、こういうものでしょうか?

 

隣室や廊下から音が聞こえてきて、居室にいても落ち着くことができません。活気があるといえばそうではありますが、生まれて一度も戸建て以外には住んだことのない中島さんには別世界のものでした。

 

また段々とスタッフの対応にも不満が募っていったといいます。要介護者や認知症患者も入居する施設。スタッフは、どこか子どもと接するような話し口調で、それは中島さんに対しても。当初は丁寧だと感じた対応も、段々と嫌気がさしてきて、中島さん、自室にこもるようになったといいます。

 

――こんなはずではなかったのに……

 

きちんと見学を行い、試食もさせてもらった。スタッフとも話をして決めたホームでしたが、実際のホームでの暮らしを想像することはできていませんでした。

 

1年ほど、この環境で暮らしてみたものの、やはり耐えることはできず退居、別のホームに転居したといいます。「家を売っていなければ、一度、戻ることができて、こんなに耐えることはなかったんですけど……」と中島さん。前回の失敗を反省し選んだこともあり、いまのところ不満はないといいます。

 

通常の住まいにおいて、当初は理想通りでも段々とズレが生じ、最終的に引越しをしたという経験は多くの人にあるでしょう。それは老人ホームでも同じで、結局は住んでみないと分からないもの。退居することも珍しくないので、そのことを見越して自宅の売却時期は考えたほうがよさそうです。

 

[参考資料]

内閣府『令和6年版 高齢社会白書』