誰にでも死は訪れます。大切な家族の最期のあり方を想像したことがあるでしょうか。もし認知症などにより本人の意思確認が困難となったとき、延命処置を施し生き永らえさせることについて、どう考えるでしょうか? 本記事ではYさん家族の事例とともに、終末期の介護の実態を長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
延命を願った「妻」…年金20万円の認知症終末期・85歳夫の「胃ろう」、50代の子どもたちは望まなかったワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

2年前に母を亡くした父が紹介してきた女性

<事例>

父Sさん 82歳 認知症末期 元会社経営者

父のパートナーTさん 79歳 内縁関係

 

長男Yさん 52歳 会社員 既婚

長女Rさん 50歳 未婚 父Sさんの在宅介護を担う

 

Yさんは大手企業に勤める会社員です。18歳で進学のため新潟県の実家を離れました。東京都内の大学を卒業してからそのまま都内の大手金融機関に就職。27歳で元同僚の女性と結婚し、翌年には子供も誕生しました。順調に昇進を重ね、34歳のときに都心にマンションを購入。2年前に一人娘も大学を卒業し、大手メーカーに就職できました。そんな絵に描いたような順風満帆な人生です。

 

しかし52歳になったいま、Yさんは実家の父親のことで悩みを抱えています。

 

82歳の父親Sさんは10年ほど前から物忘れがひどくなり、認知症の診断を受けました。現在は認知症末期の状態と医師から告げられています。すでに歩くことや会話することはできません。Yさんの妹Rさんが実家に住み、付きっきりで在宅介護をしています。

 

5年前、認知症が中期の段階に入ったころに、父Sさんの暴言や暴力、被害妄想がひどくなり手に負えなくなったため、老人介護保険施設などへの入所を検討したことがあります。東京から休みを使って新潟に帰省し、施設に行って話を聴くなど準備を進めていたのですが、それに強く反対する家族がいました。

 

それが父Sさんの内縁の妻、Tさんです。父親のSさんは現役時代、小さな工務店を経営していました。もとは大工でしたが独立し、社員数名の小さな会社を作ったのです。経営は順調で、子供時代の長男Tさん、長女Rさんは比較的裕福に育ったと自覚しています。

 

実の母親は当時会社で専務として切り盛りしていましたが、22年前、57歳の若さで胃がんにより亡くなってしまいました。その2年後、当時60歳だった父親Sさんは長男と長女に再婚したいという話を切り出します。母親と同じ年齢だという女性、Tさんを紹介されました。母親とは違い、どこか派手な印象のある女性です。夜の商売をしていたような雰囲気があります。