一家の大黒柱が亡くなり、生活に行き詰まることのないよう、遺族に払われるのが公的保障である遺族年金。しかし、大切な夫が亡くなったとしても、「遺族年金ゼロ」というケースは珍しくありません。みていきましょう。
年金月6万円・飲食店経営の75歳夫、逝去…68歳妻〈遺族年金ゼロ〉の事実を前に店を再開「死ぬまで働くしか」と覚悟する「厳しい現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢夫婦、配偶者が亡くなりおひとり様になると、収入も支出も6割に

総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』によると、高齢夫婦の1ヵ月の支出は25万円ほど。一方で、ひとりの高齢者の1ヵ月の支出は14.8万円です。

 

あくまでも平均値の話ですが、高齢夫婦、配偶者が亡くなりおひとり様になったとき、支出はふたりのときの6割程度になります。

 

【「高齢夫婦」と「高齢のおひとり様」の1ヵ月の支出】

消費支出:250,959円/148,028円

(内訳)

食料:72,930円/39,362円

住居:16,827円/12,849円

光熱・水道:22,422円/14,417円

家具・家事用品:10,477円/6,502円

被服及び履物:5,159円/4,054円

保健医療:16,879円/8,271円

交通・通信:30,729円/14,262円

教育:5円/0円

教養娯楽:24,690円/14,622円

その他の消費支出:50,839円/33,690円

※数値左より、高齢夫婦のみの世帯/単身高齢者

 

では収入はどうなるのか、元会社員の夫と専業主婦の妻で考えてみましょう。

 

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給権者平均年金月額は14万4,982円。65歳以上男性に限ると16万7,388円。会社員の夫と専業主婦の妻という高齢夫婦が受け取る年金は、月23.5万円ほどになります。

 

この元会社員夫が亡くなった場合、遺族となる妻は、遺族厚生年金を受け取ることができます。遺族厚生年金は、老齢厚生年金の4分3の額。単純計算7.4万円ほどになります。自身の老齢基礎年金と合わせて、夫を亡くした妻は、月14.2万円を受け取れる計算です。

 

夫婦で月23.5万円だった年金は、月14.2万円に。収入もおよそ6割になる計算で、支出の減少とほぼ同程度。ちなみに老齢年金の実際の手取り額は、税金や保険料が引かれて、額面の85~90%程度。しかし遺族年金は非課税。夫を亡くした後のほうが、税負担は軽くなります。