年金月18万円…それでも「年金だけじゃ足りない」のワケ
厚生労働省『令和5年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の全所得における公的年金の割合は、100%だという世帯が全体の41.7%、80~100%だという世帯が17.9%。合わせると高齢者世帯の6割にものぼります。高齢者にとって、いかに年金に大切かが分かります。
そんな年金をどれほど受け取っているかというと、厚生年金保険(第1号)受給権者平均年金月額は14万4,982円。65歳以上男性に限ると16万7,388円。年金の手取り額は額面の85~90%といわれているので、実際は14.2万~15万円ほどを手にしていると考えられます。
また高齢者の1ヵ月の消費支出は月14万8,028円。平均的な元サラリーマンであれば、年金だけで生活できるかどうか、ギリギリのライン。基本ベースは年金で、足りないときは貯蓄を取り崩して対応、というのが、平均的な老後といえそうです。
平均的な給与をもらい、平均的な年金額をもらっていたとしても、すべての人が順調なわけではありません。山本太一さん(仮名・65歳)も、順調にいっているとは言い難いひとり。
学校を卒業し、社会人になって40年あまり。60歳で定年を迎えましたが、再雇用制度を利用して65歳まで継続勤務。会社を離れるのと同時に、年金を受け取り始めました。その額、月18万円。60歳から65歳まで厚生年金に加入し続けたことで、60歳定年で現役を引退するよりも、年金は月1万円強増えたといいます。
手取りにしたら、15.3万~16.2万円。平均的な支出だとしても、毎月お釣りがきます。しかし山本さんは、「年金だけじゃ足りない」「働かないと生きていけない」というのが口癖です。
実は山本さんは離婚を経験。住宅ローンの返済と2人の子どもの養育費などで、65歳までに自身の老後資金をほとんどつくることができなかったといいます。
貯金はわずか百数十万円ほど。これでは老後は心許なく、働けるうちは働いて、少しでも蓄えを増やしていきたいと考えているといいます。