低金利を背景に、夫婦で高額の借入れを行い、タワマン購入層の主役に躍り出たパワーカップルたち。しかし「夫婦2馬力でタワマン購入」には博打に近いリスクが隠されています。
調子にのっていました…世帯年収1,500万円の40歳夫婦、「1億円の住宅ローン」で湾岸タワマン購入も、破産を前に大後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

不動産の営業担当のセールストークにのせられて「1億円の借入れ」…本当に返せる?

大手メーカーで働く大輔さんは、年収900万円。情報処理関連の会社で働く沙織さんは、年収600万円ほど。世帯年収は1,500万円と、いわゆるパワーカップルと呼ばれる夫婦です。

 

ローン返済についてみていくと、返済方式は元利均等、金利は0.5%、返済期間は30年とすると、利息分は770万8,045円。月々の返済額は29万9,189円。1年間の総支払額に対する年収の割合である返済負担率は23.9%。20%前後が無理なく返せる範囲といわれているので、少しローン負担を感じる程度。「年収も増えていくし、問題ないだろう」というもくろみだったといいます。

 

しかし、日銀の利上げを受けて住宅ローン金利の上昇の現実味が増してきました。早ければ今年秋口、遅くても来年はじめには、住宅ローンを抱える人たちに影響が出てくるだろう、という専門家も。

 

戦々恐々としているなか、さらに沙織さんに「親の介護問題」がふりかかろうとしています。

 

――76歳で父が寝たきりになって、最近は認知症も。基本的に母がみていますが、やはり大変みたいで

 

沙織さんには兄が二人。しかしどちらも地方在住で、サポートするとなると沙織さんしかいないといいます。

 

――介護のために仕事をセーブしたら収入が……

 

息子の教育費がさらに膨らむのは目に見えています。そのようななか収入減となったら、ローンの返済負担はさらに重くなり、「ローン破産」の現実味が増します。

 

――いまさらながら、調子にのっていましたね、私たち

 

そんな後悔を口にする大輔さん。そもそも「夫婦2馬力で1億円の借り入れ」を完済するためには、70歳手前まで2人とも収入が途絶えないことが大前提。片輪になることはもちろんのこと、車輪が小さくなることも許されません。

 

もともと、億を超えるタワマンの購入層は、いわゆる富裕層が中心でした。しかしそこに現れたのが、夫婦の収入を合算する1,500万円を超えるようなパワーカップル。低金利を背景にタワマン購入層のメインになっていきました。そこには「30年間、夫婦ともに現状を維持できればめでたく完済。できなければ破産」という博打に近い状況が隠されていましたが、勢いのある夫婦は「私たちは大丈夫」と突き進んでいったわけです。

 

予断を許さない状況がしばらく続きそうです。

 

[参照]

株式会社不動産経済研究所『首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024年7月』