政策に対する反感から逆張りした結果…
岡山県在住の村下元也さん(58歳・仮名)がFXを始めたのは、2012年頃のことでした。当時は、1ドルが80円を割り込む超円高時代。村下さんは、会社の給与が上がらない中、副収入を得る方法を模索していました。
「何となく将来が不安で、もっとお金を貯めたかったんです。でも、副業をするほど時間の余裕もない。そんなとき、雑誌でFXの特集を見て、誰でも簡単に取引できることを知りました」と村下さん。
村下さんがFXを始めると、すぐに相場に大きな変化が起こります。いわゆるアベノミクス相場で、それまでの円高進行から一転、急激な円安が始まりました。
さまざまなニュースが飛び交う中、村下さんはこの政策に強い違和感を覚えるようになります。「こんな人為的な円安が長続きするはずがない」という思いが、次第に強くなっていきました。
チャートで相場の流れを分析するよりも、自分の直感を重視していた村下さんは、政策への反感から、ついつい円安・ドル高のトレンドに対して逆張りのポジションを取るようになりました。自分の考えに合うニュース記事を見つけては、「絶対に円高に戻る」という確信を深め、何度も円買い・ドル売りのポジションを取りました。
しかし、現実は村下さんの予想とは裏腹に、円安傾向は続きます。損失を出すたびに、「ここから反転したら悔しい」という思いが強くなり、相場観を切り替えることができません。今度こそと円買い・ドル売りで勝負しては、同じ失敗を繰り返したそうです。
「気がつけば、300万円近くあった運用資金は50万円ほどになっていました。さすがにあきらめるしかなくなって、FXをやめることにしたんです」と村下さんは振り返ります。