定年後、何をするかは、40年余り仕事に邁進してきたサラリーマンにとって考えどころ。趣味に生きてもよし、やはり俺には仕事しかないと生涯現役を誓ってもよし。何をやっても自由ですが、なかにはエリートとして一目置かれていた人が「えっ、こんな姿に……」という転落劇を繰り広げる場合も……みていきましょう。
惨めなもんだな…年金25万円の73歳、かつて年収2,000万円超の「元エリートサラリーマン」が、50歳年下に罵倒されても「コンビニバイト」を続けるワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

最高「年収2,000万円超」の元エリートの転落劇

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大企業(従業員1,000人以上)の部長職(大卒男性・平均年齢52.8歳)の平均給与は月収で76.6万円、年収で1,303万円。これはあくまでも平均値。井上さんの最高年収は2,000万円を超えていたといいます。

 

60歳の定年とともに会社を辞めた後は元同僚に誘われて起業。退職金4,000万円はすべて事業資金につぎ込んだといいます。

 

――独り身だったから、無茶ができました

 

日本政策金融公庫『2022年度起業と起業意識に関する調査』によると、同調査で起業家とされる2018年~2022年に事業を興した人のうち、3.7%が定年退職。割合としては少ないですが、定年を機に一念発起という人たちも。

 

*勤務先からの離職理由を尋ねる設問より

 

事業は徐々にではありますが、軌道に乗り始めたといいますが、そこにコロナ禍。一気に破綻を迎えました。ちなみに、帝国データバンクの調査では新型コロナウイルス関連倒産は、判明したものでも全国で6,761件(2023年9月時点)だといいます。

 

抱えてしまった負債は、老後資金として貯めていた預貯金でチャラに。ただし何も残らず、あるのは、2ヵ月に一度振り込まれる年金のみ。その額、月23万円と、平均と比べるとかなり多く、さすが元エリートという金額。ただ貯蓄ゼロではとてもこの先の老後を乗り切れる自信はなく、コロナ禍が明けてから、コンビニエンスストアのアルバイトを始めたといいます。

 

現在の時給は1,350円。月に17万円程度の収入になるそうです。少しずつで貯金も増え、心に余裕が出てきたとか。なによりも、さまざまな人と出会うコンビニバイトは今まで経験してきた仕事の中で一番刺激的なのだとか。意外にも充実したセカンドライフを送っています。

 

[参照]

国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集』

内閣府『令和2年度少子化社会に関する国際意識調査』

日本政策金融公庫『2022年度起業と起業意識に関する調査』