終の棲家について考えたとき、住み慣れた自宅と思い描く人が多いようです。しかし年齢と共に体の自由がきかなくなり、自宅で暮らし続けることが困難に。そうなると老人ホームへの入所というのも、ひとつの選択肢になるでしょう。ただ一度入所すれば、安心というわけではないようです。
何度、手を合わせても…57歳ひとり娘が一生後悔を引きずる、年金14万円「老人ホーム」で亡くなった75歳母の最期の言葉 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームへの入居を快諾した母は、急激に元気を失くしていった

ケアマネージャーにも相談したところ、老人ホームへの入居を検討したらどうかとアドバイス。プロとして相性が良い施設を紹介することもできるといいます。

 

ただ由美子さん自身、老人ホームに良い印象はありません。昔は「姥捨て山」と言われ、「親を老人ホームに入れるなんて親不孝者!」と罵られたもの。そのようなイメージが強かったのです。ケアマネージャーにそのことを素直に言ってみたところ、「一度、見に行くといい」と、見学の段取りもしてくれたといいます。

 

実際に目にした老人ホームは、思い描いていたものとはまったく違いました。入居費用を見積もってもらったところ、月14万円程度の母親の年金でも、何とかなりそうであることが分かりました。

 

――ここならお母さんも納得してくれるはず

 

そう思い、母親に相談。すると予想に反して快諾してくれたといいます。

 

――「自宅を離れるのはイヤ!」と猛反発をくらうかと思っていたのに

 

こうして老人ホームに入居した母親。これで安心と思っていましたが、ホームに入ってから萎んだように元気を失くしていったといいます。そしてホーム入居から8ヵ月後、息を引き取りました。

 

怒涛の日々を振り返り、毎日、母の遺影が飾られた仏壇に手を合わせる由美子さん。後悔を口にします。

 

――息を引き取る前に、聞こえるか聞こえないかの声で言ったんです、母は「家に帰りたい」って

 

老人ホームへの入居を快諾した母親でしたが、実は「このままでは、私も潰れてしまう」という由美子さんの言葉を耳にしていたといいます。「これ以上、娘に迷惑をかけていられない」と考えたのでしょう。快諾をしたふりをしてくれていたと、振り返ります。

 

公益財団法人日本財団が行った『人生の最期の迎え方に関する全国調査』によると、人生の最期を迎えたい場所「自宅」が58.8%と半数を超え、一方で避けたい場所としては「介護施設」が34.4%でした。

 

――せめて、最期の願いくらい叶えることはできなかったのか

 

何度、亡き母に手を合わせたところで、後悔の念は消えません。

 

[参照]

総務省『就業構造基本調査』

公益財団法人日本財団『人生の最期の迎え方に関する全国調査』