65歳以降も給与があるから…「繰下げ受給で年金70%増額」も、なぜ後悔?
実際にどれほどの人が「繰下げ受給」を利用しているのでしょうか。
厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 』によると、厚生年金の繰下げ受給者は37万4,481人。これは老齢厚生年金受給権者2,746万3,864人の1.3%。この5年間で0.7%→1.3%、数にして18万人が繰下げ受給を利用しています。
実際に繰下げ受給制度を利用した内藤登さん(仮名・73歳)。65歳時点の年金額は月16万円程度でしたが、40年以上、仕事ひと筋だったため、現役を引退してもやることが見当たらず……65歳以降も引き続き働き続けると決めたときに、「それであれば、必要になってから年金を受け取れるようにしたらいい。そのぶん、年金が増える」とアドバイスされたのだとか。「そのほうが将来的にいいかな」と思い、今に至ります。
先日、仕事を辞め、年金を請求。増額率は70.0%となり、65歳で16万円だった年金は27.2万円、さらについ最近まで保険料を納めていたことで、さらに年金額は増え、月29万円ほどになるのだとか。
――月に30万円近くも受け取れたら、老後も安泰ですね
そう思うかもしれませんが、内藤さんは「もっと早く受け取っていればよかった」と後悔を口にします。内藤さん、実は体を壊したことで仕事を引退。年金の受給を開始していました。医療費などもかさむので多くの年金がもらえるのは心強いものの、ここまで必要なのかといえば疑問符。
――仕事しかないなんて考えず、やりたいことを見つけていたら
――年金が増えたところで、使い道といえば病院代に薬代……むなしい
日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.14年。一方で「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は2019年時点で男性が72.68年、女性が75.38年。内藤さんは健康寿命を超えて働いていました。結果、老後、健康である期間に年金をもらうことなく過ごしてしまったわけです。
もちろん、将来の医療費や介護費用を見込んで繰下げ受給を選択するというのもひとつの考え方。自身がどのように年金を受け取れば納得できるのか、後悔しないのかも考えて、繰下げるかどうかを選択することが重要です。
[参照]