学校を卒業して以来、40年近く、働き詰めの毎日。そんな会社員のひとつの区切りとなるのが定年です。セカンドライフ、どのように過ごしたいかと思い描いているなかで、都会を離れて田舎へ……と、憧れを現実にする人たちも。ただ夢の先にあるのは、甘い話だけではないようです。
市営団地に30年、「退職金3,000万円」「貯金4,000万円」の共働き夫婦、60歳定年後に念願の田舎暮らしを実現…年金月35万円で余裕の老後のはずが一転、突然の終焉を迎えたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

結婚以来、市営団地暮らしでコツコツと貯金…いよいよ夢を実現する時がきた!

日本では65歳以上を高齢者、65~75歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と定義していますが、実際に「自分は高齢者だ」と意識するのは何歳からなのでしょうか。

 

60歳以上を対象とした内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によると、「自身を高齢者だ」と意識している人は、「60~64歳」で19.1%、「65~69歳」で30.7%、「70~74歳」で49.2%、「75~79歳」で68.8%、「80歳以上」で86.2%。半数を超えるのは75歳以上で、いかに昨今は「元気なお年寄りが多い」かが分かります。

 

一方で定年年齢の主流は60歳ですが、来年からは65歳までの雇用確保が義務となり、さらに現在、70歳までの雇用確保が努力義務になっています。長い長い定年後、働くのもよし、セカンドライフをスタートさせてもよし。どうするかは人それぞれといったところです。

 

ともに60歳で定年を迎えたという、里田浩二さん・由美子さん(ともに仮名)夫婦。結婚したのは、今から30年ほど前で、ちょうど共働き世帯と専業主婦世帯の割合が拮抗(きっこう)していた時代です。2人の子宝に恵まれましたが、夫婦は共働きを選択。お互いの実家は地方で、親(祖父母)のサポートは得られず、子育ては大変だったといいますが、50代前半で下の子が大学を卒業し、子育てからは解放。あとは2人のセカンドライフを考えるだけ、というタイミングで、「定年を迎えたら、田舎に移住しよう」という案が急浮上したといいます。

 

子どもが生まれてから、何度かマイホーム購入を検討したといいますが、なかなか決めきれず。その大きな理由が、住まいである市営団地、その周辺に子どもたちの友人が多数いたから。「絶対、転校したくない!」「お友達と離れたくない!」という子どもたちの願いを大切にしていたら、市営団地での生活は30年を超えていたといいます。

 

――おかげでお金は十分貯まりました

 

コツコツと続けてきた預貯金は4,000万円、さらに定年退職金が2人で3,000万円と、合わせて7,000万円。年金支給が始まるまでの5年間で必要な生活費を1,500万円、老後資金として2,000万円を確保したら……田舎暮らしスタートの軍資金は3,500万円。実に堅実的なシミュレーションで物件探しを始めると、由美子さんの地元近くで、900万円で状態のいい古民家を発見。敷地面積は300坪と広大で、自家菜園し放題。最寄り駅まで車で30分と交通の便には難はあれど、車を運転できる間は何ら問題はなく、またコミュニティバスも走っているので、車を手放しても何とか生活もできそうでした。

 

熟考の末、里田夫婦は定年後に田舎暮らしをスタートさせます。