4歳に頃に子ども返りしてしまった母親
仕事と、同居する母親(82歳)の介護の両立にはげむ、斉藤理子さん(仮名・42歳)。少し前まではリモートワークだったので問題ありませんでしたが、最近は会社全体では出社推奨と、理子さんの部署は原則出社となり、仕事や介護の両立が難しくなってきたといいます。
昼は基本的に外部の介護サービスを利用。夕方以降は理子さんにバトンタッチして、理子さんが母親の面倒をみます。
認知症の症状は色々とありますが、母親の症状の特徴は子供返り。どうも母親は4歳の頃に戻っているらしく、「みっちゃんねぇ(母親の名は美恵子/仮名)」とかわいらしく話します。そして「靴下履けないー」「シャツ、着れない」など、できることをできないといい、甘えようとします。
――介護スタッフの皆さんにも迷惑をかけているんだろうな
そんな子ども返りしてしまった母親の症状は、どんどんヒドクなり、最近は自分ではご飯を食べようとせず、「ねぇ、お口アーンするから食べさせて」と甘える始末。色々なことを世話しなければならなくなり、介護度は3に。介護にかける時間が一層と多くなったといいます。
厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』で、要介護度別に「同居の主な介護者」の介護時間をみていくと、介護度2では「ほとんど終日」が17.0%、「半日程度」が12.3%、「2~3時間程度」が16.4%。一方、介護度3では「ほとんど終日」が31.9%、「半日程度」が21.9%、「2~3時間程度」が11.5%と、一気に負担が大きくなることが分かります。
そこで気になるのが仕事との両立。介護度が2から3になることで、より両立は難しくなり、介護のための離職が増えていきます。厚生労働省『令和4年就業構造基本調査』によると、2022年、1年間で介護を理由に会社を辞めた人は10万6,000人。さらに男女別にみていくと、男性は2万6,000人、女性は8万人と、全体の実に8割が女性という結果に。働きながら介護にあたる人は全国で260万人程度とされているので、介護離職率は4%といえそうです。
理子さんも子ども返りがヒドくなっていく母親に手を焼き、どんどん介護負担が大きくなります。
――もうそろそろ限界かもしれない
仕事を辞めるべきか、それとも施設に預けるべきか。仕事を辞めると再就職の際に不利になってしまうし、自身の老後を考えるとしっかりと資産形成を進めていきたい……そう考えると、老人ホームへの入所が現実的でした。