入所から3ヵ月…老人ホームから1本の電話
立地も予算もぴったりの老人ホームに父親が入所した日。仏壇で微笑む母親に「ごめんね、しばらく離れ離れだね」と報告。久々に落ち着いた時間を過ごしました。そんな日がずっと続くものと考えていました。
しかし、老人ホームに入所してから3ヵ月ほど経ったときのこと、1本の連絡が入ります。今週末、老人ホームに来てほしいという内容。なにごとだろう? と週末に訪れると、思わぬことを切り出されます。
――すみません、うちでは面倒をみきれません
――退所していただけますか?
老人ホームでよくある主な退去要件は以下の4つです。
1.長期入院
2.他の入居者やスタッフへの迷惑行為
3.費用の支払いが難しくなった場合
4.老人ホームの運営会社の事情
博さんの場合、頻繁に大声をあげる。さらに最近は意図的ではないにしろ、暴力をふるうこともあるのだといいます。博さんは元レスリング選手、力が強く、ほかの入居者に怪我をさせてしまったそうです。
――でも認知症の患者さん、受け入れているじゃないですか。
智子さんがそういったところで、ほかの入居者に怪我をさせたことに変わりはありません。もはや、退去せざるを得ないといった状況です。
兄や弟に「お父さん、老人ホームを退去しなきゃいけなくって」と報告&相談。しかし「えっ、うちは無理だよ」「そっちでやっちゃってよ」などと、どこか他人事。家族なのに、まったく充てになりません。さらに伯父や伯母にも電話で相談してみたところ、ほぼ無視に近い形で切られたといいます。
――なんでみんな、他人事なのよ!
ケアマネージャーに相談しながら転居先を探すものの、なかなか決まらず……退去理由が父親の暴力というところがかなりのマイナス要因で、「すみません、うちでは面倒は見られません」と、何回も何回も断られ、時間だけが過ぎていってしまいます。
退去勧告から退去までは平均3ヵ月。もうすぐ、その期限です。
――もう、なんでどこもダメなの!
絶望感に襲われる智子さん。最悪、また昔のように自宅で介護するしかない……覚悟を決めなければいけないと考えているといいます。
老人ホームは一度入ると終身利用ができると考えがちですが、そんなことはなく、退去勧告はよくある話。入居時にきちんと退去要件を確認しておくことが大切です。
[参照]