誰しも「苦手な人」はいるもの。とはいえ、ビジネスの場面はもちろん、プライベートでも親戚や家族絡みのお付き合いの場合、「あの人は苦手だから」と、避けて通るわけにはいきません。そんなとき、できるだけ相手での苦手意識を減らしてコミュニケーションをとる方法とは? フリーランスでキャスターや社外役員などを行う木場弘子氏の著書『次につながる対話力~「伝える」のプロがフリーランスで30年間やってきたこと~』(SDP)より、詳しく解説します。
嫌いな人への苦手意識が「8割減」する?やって損なしの〈行動〉とは【対話のプロが助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

苦手な人と対話できたら上級者!

最近話題の「話し方」「聞き方」などのコミュニケーション関連の本を何冊か読みました。いずれも様々な考え方やノウハウが紹介されており、大いに参考になりました。ところが、ある本では、苦手な人との接触を避けるよう勧めていて少々驚きました。

 

しかし、実際のビジネスの場では「あの人は苦手だから」と、避けて通るわけにはいきませんね。敢えて話す必要のないシチュエーションであれば、無理せず沈黙を通す選択もあるとは思うものの、そうしているといよいよ苦手意識は募って、たとえば「報・連・相」といった基本的なことも滞ることになりかねません。

 

これはある種の“挑戦”となりますが、あまり深刻に捉えずにRPGゲームのようなつもりで色々と攻略法を試してみる。コミュニケーションの「経験値」を上げるいい機会という程度に考え、焦らずにトライしましょう。

 

ここでは「苦手な人」というのを、たとえば職場の上司や同僚、あるいは関係の深い取引先の担当など、毎日の仕事の中で避けられない関係、絶対に付き合わないといけない人。その人について明確な理由がなく、性格上のソリが合わない人と設定してみます。

 

まず最初に、相手をよく観察することから始めましょう。緊張につながる不安や恐れというのは、当の相手のことがわからないほど強く感じられますので、苦手だからと見ないようにしていると、ますますわからない部分が増え、苦手意識が募るのは当然です。

 

自分は、その人のどこを苦手と感じるのか? 過去に苦手だった人との共通点はあるのだろうか? 周囲でその人を苦手としていない人は、どんな風にその人と接しているのか? 苦手にしていない人に、その人の良いところ、魅力などを聞いてみるのも参考になるかと思います。こうやって分析をしていくにつれ、不安や恐れ、苦手意識が小さくなれば第一段階クリアです。

 

このようにして精神的ハードルが少しでも下がったら、最初は明るく挨拶することから始めてみてください。この“挨拶作戦”、実はプロ野球の現役選手時代に夫が指導者に対して行い、大きな成果を挙げたようで、以来見習っています。自分が苦手だと思っていると、その負のオーラは相手にも伝わって、相手もそう思っている可能性大です。

 

もっとネガティブな人なら「この人は自分を嫌いに違いない」と決めてかかっているかもしれません。しかし、そんな相手から、会うたびに「おはようございます!」「お疲れさまです!」と、明るく挨拶されたら、どう思うでしょう。「あれ、この人、自分のことを嫌いなのかと思ったけど、自分の勘違いだったのかな?」そう思わせたら、第二段階クリアです。

 

これで、その人がニヤッとでも笑ったら、しめたもの。あとは少しずつ距離を縮めて、趣味の話や最近のちょっとした話題など、試しに話してみましょう。きっと、前よりは緊張やストレスも小さくなっていることに気づくはず。ここまでいけば、あなたはもうコミュニケーションの上級者です。

 

まず、自分が相手を苦手と思う理由を自分なりに分析し、一方で少しずつ近付く努力をする。私の経験では、こうした努力で苦手意識の8割は激減して楽になると思われます。ぜひ試してみてください。それでもダメなら、諦めるという選択肢もやむを得ないでしょう。

 

そこで初めて「そういう人は避けましょう」となっても、仕方がないかもしれません。

 

 

木場弘子

フリーキャスター