ペアローンでぎりぎり購入できた理想の住まいだったが…
<事例>
夫Sさん 42歳 会社員 年収650万円
妻Tさん 40歳 主婦
子供2人
7年前に7,500万円で住宅購入
当初の金利 0.6%(35年返済、変動金利型)
現在の残債 約6,000万円
毎月の返済 16万6,000円
預貯金 35万円
Sさんは首都圏近郊に住む会社員です。7年前に7,500万円で戸建て住宅を購入しました。当時は妻Tさんも正社員として働いていて、世帯年収は1,020万円ありました。
住宅の見積もりは7,500万円。当時のSさんの年収は550万円だったため、必然的にペアローンを利用せざるをえませんでした。世帯年収1,020万円に対して7,500万円の住宅をフルローンで購入するのは無謀かと感じましたが、住宅営業マンが「バブル崩壊後最も低金利の状態です、今後もこの金利で続くはずです」と熱心に教えてくれて気持ちが緩んでしまいました。
提示された金利は0.6%でした。変動金利で35年返済、毎月の返済額は16万6,000円です。妻のTさんは「高すぎる、まだ若いし賃貸でいいと思う」と不安がっていましたが、夫Sさんが「家は一生に一度の大きな買い物。妥協して、不満を持ちながら住み続けるより、多少無理してでも理想にできるだけ近い家を買いたい」と説得。妻を押し切るようなかたちで契約しました。
土地の坪数は70坪、建物の延べ床面積は36坪。申し分のない立派な邸宅を買うことができました。最寄り駅まで徒歩10分ほどで、学校やスーパーも近くにあります。広い駐車スペースがあるため、ついでにと思い、それまでの軽自動車をSUVに買い替えました。黒いボディのSUVが建物によく似合うと夫Sさんはご満悦でした。
ところが購入から3年が経ったころ、38歳だった夫Sさんに病が襲い掛かります。S状結腸がんでした。腸管とリンパ節を切除する手術を受け、3ヵ月ほど仕事を休みました。無事職場に復帰できたものの、妻Tさんは今後のことについてひどく不安になったようです。
「がん保障付の団信に加入できていたらいまごろ住宅ローンがチャラになっていたんですけどね……」と悔やむ夫Tさん。0.1%金利が上乗せされることに躊躇して加入しませんでした。しかし、自分で加入していた医療保険からがん保険の診断一時金が300万円支払われ、それでSUVの残債を完済できたのは助かりました。
仕事も復帰できたしまた頑張っていこうと思った矢先、さらなる問題が発生。妻Tさんがうつ病の診断を受け、仕事を辞めざるを得なくなったのです。コロナ禍で外出ができなくなったこと、勤務先の業績が下がりボーナスが減額されたこと、大きな住宅ローンの負担があることなどがストレスになっていたのかもしれません。
仕事を辞めた時点で、残債で3,000万円程度あったTさん分の返済は、夫Sさんが肩代りするしかありませんでした。Tさんの病状はさらに悪化していき、この3年間で2回入院をしています。
夫Sさんだけの収入では生活と住宅ローン返済は厳しいのが現実です。かといって妻に負担をかけたくないので話し合いもできません。妻は「私を責めている」と激昂することもあり、とても実務的な話ができる状態ではないのです。
2024年に入り、日銀の利上げのニュースに不安になった夫Sさん、FPに相談してみることにしました。