女性の就業率は上昇し続け、共働き世帯が専業主婦世帯を圧倒するほどのになっています。一方で、旧態依然の仕組みが残る年金制度。それは遺族年金も同様で、「なぜ、そうなるの!?」ということも。夫婦共働きでともに定年まで勤め上げた夫婦が直面した、年金の真実とは?
結婚39年でひとり身に…夫婦で年金35万円だった元キャリア妻、年金事務所で聞いた「遺族年金額」に涙腺崩壊「あんなに働いてきて、この仕打ち」 (※写真はイメージです/PIXTA)

結婚40年を前に夫と永遠の別れ…「元キャリア妻」が遺族年金額を聞いて泣いた

今年、65歳を迎えたという女性。大学を卒業し、正社員として就職したのは1982年。まだ男女雇用均等法などない時代です。就職した会社の先輩として出会ったのが、2歳年上の夫だったといいます。

 

結婚したのは1985年。女性は結婚を機に退職するかどうか考えましたが、夫が「これからは女性も働く時代だからと」、あくまでも女性が仕事を続けたいなら続けたらいいと、後押ししてくれたといいます。こうして、結婚・出産を経ても正社員として働き続けることを選んだ女性は、2019年に60歳となり定年退職。夫はその2年前に定年退職をしていたので、これでやっと夫婦ともに現役引退。来年には、結婚40年を迎えます。

 

――結婚40年は「ルビー婚式」だって

――どんなお祝いをしたらいいんだろうね

 

そんな他愛もない話をしている矢先、突然の不幸が二人を襲います。夫が67歳で心臓発作で急死。まったく前兆などなく、あっけない別れでした。

 

あまりに突然すぎる夫との別れに「泣くことさえ忘れていた」という女性。初めて泣いたのは悔し涙だったかもしれないといいます。

 

それは、遺族年金の手続きで、年金事務所を訪れたときのこと。亡くなった夫は大学を卒業して以来サラリーマンだったので、遺された妻は遺族厚生年金を受け取れるはずです。

 

遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額ですが、65歳以上の場合、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうの額が遺族厚生年金の額となります。

 

ちなみに、夫婦の年金額は以下の通り。

 

夫:国民年金6.6万円、厚生年金11.5万円

妻:国民年金6.6万円、厚生年金10.7万円

■夫婦合計月35.4万円

 

単純計算、夫の遺族厚生年金額は月11.1万円。つまり女性は月28万円ほどを手にできる……そう思っていましたが、そうではなかったのです。65歳以上の遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。つまり「遺族厚生年金額-自身の老齢厚生年金額」でプラスとなった金額がもらえるということ、女性の場合は……「たった月4,000円!?」ということに。

 

――別にわたしの年金だけでも十分暮らしていけるので、悔しかったのは金額ではない

――「あなたの夫の遺族年金は4,000円です」と言われた気がして。「あんなに働いてきて、この仕打ちか!」と思ってしまったんです

 

大変な思いを色々してきた現役時代、夫婦二人三脚で頑張ってきた苦労が思い出されますが、その苦労の結果の遺族年金が「月11.1万円→月4,000円」と分かったとき、急にその苦労が否定された気がして、思わず涙が出てきたのだとか。

 

遺族年金の支給停止。そこに、色々な思いを抱く人もいるようです。

 

[参照]

総務省『労働力調査』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』