長年添い遂げた夫婦もこの世を去るタイミングまで一緒、というわけにはいきません。多くの場合、どちらかが先に亡くなります。2人では十分であった年金も、1人遺されると決して十分な額とはいえないようで……。特に国民年金に加入する自営業者は注意が必要です。本記事では、Aさんの事例とともに自営業者の年金について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
2人では年金13万円だったが、75歳元自営業の夫の死により遺された妻が受け取る「ツラすぎる遺族年金額」…一転、40年前の「夫の英断」に感涙したワケ【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんが遺族年金を受け取れない理由

年金は、老後以外にも受け取れる場合があります。たとえば、一定の障害状態となってしまった場合は障害基礎年金
年金の被保険者が死亡してしまった場合には遺族基礎年金を受け取ることができます。ただし、遺族基礎年金を受け取れる方には条件があります。

 

子のある配偶者

 

ここでいう「子」とは、18歳を過ぎた3月31日までの方もしくは一定の障害状態となっている20歳未満の方を指します。言い換えると、「子のない配偶者」は遺族基礎年金の受給権者となりません。

 

Aさんの妻の場合、すでに子は独立しており受給要件を満たさないため、Aさんが亡くなったことによる遺族基礎年金を受け取ることができないのでした。

 

夫が他界したあとのAさんの年金受取額

6万8,000円/月

遺族基礎年金:なし

合計受取年金:6万8,000円

 

夫他界前の収支

■収入

2人の年金 13万6,000円

Aさんのパート収入 8万円

合計 21万6,000円

 

■支出

生活費およそ15万円

 

夫他界後の収支

■収入

Aさんの年金 6万8,000円

Aさんのパート収入 8万円

合計 14万8,000円

 

■支出

生活費およそ 14万円

 

Aさんは、夫の死亡による遺族基礎年金を受け取ることができず、Aさん本人年金とパート収入のみの生活となり、収支バランスが傾きつつあるのでした。

年金と老後の生活費について

総務省「家計調査報告」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出は25万959円となっています。また、65歳以降の単身無職世帯(高年齢単身無職世帯)の消費支出は14万5,430円となっています。
言い換えると、セカンドライフの生活費は夫婦で約25万円、単身で約15万円かかっているということに。近年は物価高の影響もあり、消費支出は増加傾向にあります。