お義母さん、そんなにお金、いりますか?
遺産分割協議の場に集まったのは、相続人となる4人のほか、姉の夫(義兄)も。姉夫婦とはあまり付き合いがなく、年賀状のやり取りをする程度。年に1回、お盆のタイミングで帰省するのが女性家族の恒例ではあったものの、姉家族とはタイミングが合わず……きちんと顔を合わせるのは何年ぶりか、思い出せないくらいだったといいます。
――相続とかよく分からないから「面倒なことが起きそうで不安」と言ったらついてきてくれた(姉)
――自分の父のときに相続を経験して、勉強もしたので、アドバイスできると思って(義兄)
当事者だけでは、なかなか決められないこともあるだろうから、第三者として助言を……ということのよう。女性はこの段階で一抹の不安を覚えたといいます。
遺産は、実家のほか、株式が3,000万円、預貯金が1,000万円。確かに、遺産は実家くらいだと思っていた女性にしてみたら、プラス4,000万円近くあるのは驚き。ただ遺産の分け方については「実家は母、ほかは法律通りでいいんじゃない」と家族全員の意見が一致。姉が不安に思ったような面倒なことは起きませんでした。
そのような流れに「安直に分けるべきではない」とストップをかけたのが義兄。「法律通りに分ければ、問題はないのでは?」というと、「二次相続まで考えるべきだ」と反論。
――特にお義母さん、80歳近くになるのに、そんなに遺産、必要ですか? たくさんもらっても意味ないですよね
思わず、家族は全員「えっ!?」と言葉を失ったといいます。「この先、お義母さんはそんなにお金必要ない、それなら……」と言いかけたところで、姉が「何言っているのよ!」「ここから出ていって!」と、その場からつまみだされたといいます。
義兄の良かれと思ったアドバイスによって凍り付いた場。「お母さん、本当にごめんなさい」と失言を謝るしかない姉。
確かに先を考えれば、義兄のいうことは正しい。しかし「お義母さんはこの先長くないから、お金を持っていても仕方がないですよ」と、ほぼストレートに伝えるのは、あまりに配慮がない……とても嫌な空気がしばらく漂っていたといいます。