厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、高卒と大卒の生涯年収には約5,000万円の差があります。こうした状況から、奨学金制度などを利用して大学進学を決めたという人も多いでしょう。ただ、本制度の利用にあたっては、慎重に検討する必要があります。奨学金制度の注意点と家計改善の方法について、具体的な事例をもとにみていきましょう。FP Office株式会社の中山梨沙FPが解説します。
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奨学金制度を利用する場合は、借りる段階で「返済計画」を明確に

まず、奨学金制度を利用する際には、借りる金額だけではなく、将来の返済計画も明確にしておきましょう。借りたものは必ず返済しなければなりませんし、返済するにはお金を稼がなければなりません。

 

大人になったら、自動車や不動産など、ローンを組んで(=お金を借りて)大きな金額の商品を購入する場面も出てきます。そのため、奨学金で早いうちからその感覚を養っておくのは大事です。

 

奨学金の申込時に、借入金額・返済期間・適用金利で試算し、将来返済が可能かどうか確認することをおすすめします。

 

また、ここで見落としてはいけないのが、給与の支給金額と手取り額の違いです。およそ15%が社会保険料の支払いに充てられ天引きされるため、その分手元に残る金額は少なくなります。

拓也さんが今後取り組める「3つ」の対策

拓也さんは今後、収支改善を行う必要があります。収支改善の基本は、「収入を増やす」、「支出を減らす」、「お金に働いてもらう」の3つです。

 

1.収入を増やす

拓也さんの場合、収入を増やす方法は、いまの会社でステップアップすることです。また、昇進が見込めない場合には転職を視野に入れてもいいでしょう。

 

2.支出を減らす

短期間で収入のアップが見込めないいま、拓也さんがまず取り組むべきは支出を減らすことです。まず現状の収支を可視化し、支出のうち必ずかかってくる固定費と、減らす余地のあるお金を分けましょう。

 

現在、家賃に月7万円かかっていますが、実家から勤務先に通える環境なのであれば、少し余裕が出るまでは実家から通うというのも1つの手です。

 

また、都内ではなくあえて関東圏の郊外に住むなど、賃料の安い物件に引っ越す方法もあります。もしも勤務先に社宅がある場合は、お金が貯まるまで利用するのもよいでしょう。

 

こうすることで、大幅に固定費を削減することが可能です。

 

また、減らす余地のある食費や日用品にかかる出費は、あらかじめ1回あたりの予算を決めておくと、支出額を抑えることができます。予算を決めておけば、スーパーやコンビニでついつい余計に買ってしまうといった“都度買い”を防ぐことができます。

 

3.お金に働いてもらう

こうして捻出した余剰金を使って、同時並行でお金に働いてもらいましょう。運用商品は値動きのあるもので、長期目線で増やしていく心がけが大切です。投資信託はネットで1,000円からでも運用可能ですから、まずは無理のない金額から始めてみましょう。

 

ただし、余剰金のほとんどをすぐに運用に回すのは危険です。人生なにが起こるかわからりませんから、「生活防衛資金」として、ある程度現預金にも置いておくことがポイントです。理想としては、毎月かかる生活費の1年分程度現預金に貯めておくといいでしょう。

 

とにもかくにも、まずは現状把握です。収支を可視化することで、次なにをすべきかが見えてきます。悲観せず、現実に目を向けていまできることを実行していきましょう。

 

 

中山 梨沙

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー