厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、高卒と大卒の生涯年収には約5,000万円の差があります。こうした状況から、奨学金制度などを利用して大学進学を決めたという人も多いでしょう。ただ、本制度の利用にあたっては、慎重に検討する必要があります。奨学金制度の注意点と家計改善の方法について、具体的な事例をもとにみていきましょう。FP Office株式会社の中山梨沙FPが解説します。
親には感謝していますが…月収28万円・家賃7万円、都内1人暮らし30歳独身サラリーマンの後悔【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

社会人になって気づいた「予想外の事態」

その後、あっという間に4年間が過ぎ、無事新卒の社会人として1歩を踏み出した拓也さん。都内での1人暮らしをはじめ、忙しいながらも充実した新生活がスタートしました。

 

しかし、拓也さんはすぐに想定外の事態が発生していることに気づきます。それは、「額面と手取り額の差が大きい」ということと、「奨学金の返済は卒業後に1%ほどの利息がつく」ことの2つです。

 

拓也さんは、提示されている給与はすべて自分の手元に入ると思っていましたが、毎月の給与からは社会保険料等が天引きされており、実際の入金されたのは4~5万円も少ない金額でした。

 

また、奨学金は、4年間で450万円ほど借りており、返済期間は20年、利率は1.1%です。月々の返済額は約2万1,000円ほどで、このまま返済を続けると、利息だけで50万円ほど余分に払わなければなりません。

 

拓也さんの収支について、当初の見込みと現実をまとめると、下記のようになります。

 

〈拓也さんの当初の見込み〉

■収入

給与:24万円

 

■支出

奨学金返済:1.8万円

家賃:7万円

生活費等:10万円

 

■収支

24万円-1.8万円-7万円-10万円=約5万円

 

残りの約5万円は毎月貯金し、10年後結婚資金などにあてる。

5万円×12ヵ月×10年=600万円

 

<現実>

■収入

給与(手取り):19万円

 

■支出

奨学金返済:2万円

家賃:7万円

生活費等:10万円

 

■収支

19万円-2万円-7万円-10万円=0円

 

結果として、給料が入っては出る状態になり、計画していた貯金はまったくできていません。30歳になったいま、給与は28万円(手取り22万円)と、当初よりは上がったものの、昨今の円安の影響で物価も上がり、生活費も上昇しています。そのため、状況にあまり変化はありません。

 

困った拓也さんは、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーに相談することにしました。

 

親には感謝していますが、親に任せきりでよく調べもせずに奨学金を借りてしまい、本当に後悔しています。このままでは、結婚どころか、資産形成もろくにできないまま年を取ってしまいそうです。どうすればいいでしょうか?

 

相談を受けたFPは、拓也さんに次のような助言を行いました。