厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、高卒と大卒の生涯年収には約5,000万円の差があります。こうした状況から、奨学金制度などを利用して大学進学を決めたという人も多いでしょう。ただ、本制度の利用にあたっては、慎重に検討する必要があります。奨学金制度の注意点と家計改善の方法について、具体的な事例をもとにみていきましょう。FP Office株式会社の中山梨沙FPが解説します。
親には感謝していますが…月収28万円・家賃7万円、都内1人暮らし30歳独身サラリーマンの後悔【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

大学進学率は約6割…親が“多少無理をしてでも”大学に行かせたいワケ

文部科学省「令和5年3月卒業_高等学校卒業者の学科別進路状況」によると、高校を卒業後、約60%は大学に進学し、約15%程度が就職を選んでいます。

 

大学進学者が増えている背景はさまざまですが、賃金格差もその理由の1つでしょう。給与は業種によって異なるため、必ずしも、高校卒業者より大学卒業者のほうが年収が高いわけではありませんが、統計上は賃金格差があるといえます。

 

[図表1]は、厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」に基づいて筆者が作成した高校卒業者の平均年収と大学卒業者の平均年収です。これをみると、最終学歴が高校の人よりも大学の人のほうが年収が平均5,000万円高いとの結果が出ています。

 

出所:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成
[図表1]高校卒業者と大学卒業者の年齢別・平均年収比較 出所:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成

 

この賃金差を見ると、多少無理をしてでも我が子を大学に進学させてあげたいという親が多いのも頷けます。

 

しかし、大学進学には多額の費用がかかります。大学進学ガイドブックによると、受験や入学時の費用だけでも平均154万円かかるといわれ、年間でかかる学費は国立・私立、文系・理系によって異なるものの、平均的に70~80万円かかります。

 

親が全額負担するのが難しい場合、奨学金を利用することで負担を緩和させることが可能ですが、安易な利用は危険です。利用する前に知っておかなければならないポイントがいくつかあります。

大学生活が楽しく、バイトができないと奨学金を2万円増額…30歳拓也さんの「後悔」

今回ご紹介するのは、都内に住む30歳男性・拓也さん(仮名)の事例です。

 

拓也さんは、高校時代成績優秀でしたが、あまり裕福な家庭ではなかったことから、奨学金制度を利用して大学に進学することを決めました。

 

奨学金はいくつかの団体で申請することが可能ですが、もっとも一般的なのは、日本学生支援機構の奨学金です。拓也さんが利用したのは、この日本学生支援機構の「第二種奨学金」でした。

 

出所:日本学生支援機構「貸与奨学金」
[図表2]日本学生支援機構の奨学金概要と貸与月額 出所:日本学生支援機構「貸与奨学金」

 

申し込む際に、大学卒業後は利息が発生する旨について説明を受けていた拓也さん。当初は月額8万円を奨学金に頼り、あとは自分でアルバイトをして生活しようと決めていました。

 

しかし、大学入学後は、キャンパスライフが楽しく、また思ったより忙しくなってしまい、想定よりアルバイトに時間を割けないことに気づきます。そして、「社会人になったらどうにかなるか」と、途中から借りる金額を月額8万円から月額10万円に増やしました。