相続について調べると、「相続税の配偶者控除は1億6,000万円」という情報が出てくると思います。これだけ聞くと、相続において配偶者はとても優遇されているように思えるかもしれません。これ自体は事実ですが、1億6,000万円という数字だけで判断すると、かえって多くの税金を払うことになるかもしれないことをご存知でしょうか? 今回は夫を亡くされた奥様からの「配偶者である自分が全額相続するべきかどうか」という相談内容を用いながら、相続税の配偶者控除について見ていきたいと思います。
「1億6,000万円控除」の罠?相続税の“配偶者控除”が絶対お得とは限らないワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の配偶者控除を適用させるためには

相続税の配偶者控除を適用させるためには、下記の3点を把握しておきましょう。最後の要件は見落としがちなので、特に注意する必要があります。

 

①戸籍上の配偶者である

適用されるのは戸籍上の配偶者となります。内縁関係や事実婚では、戸籍上の配偶者ではないので適用されません。婚姻期間については特に規定はないので、1か月であっても適用されます。

 

②相続税の申告期限までに遺産分割の方法が決められている

相続税の申告期限までに、遺産分割についての話し合いができており、確定している必要があります。遺産分割について話し合うことを遺産分割協議と言いますが、これをしていない、もしくは遺産の分け方が決まっていない場合、この制度を使うことはできません。また相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内となっています。

 

③税務署に相続税の申告をする

相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。配偶者控除を受けると相続税が無税になるので、手続きをする必要がない、と考えてしまう人が多いのですが、相続税の申告手続きをしないと配偶者控除を受けることができません。よく見落としがちなので、相続税がかからないとわかっても、必ず申告手続きをする必要があるということを覚えておきましょう。