住まいの経年劣化は避けられず、マンションであれば大規模修繕工事を「12年周期」で考えるのが一般的で、築40年以降は建て替えも視野に検討するケースが多いようです。しかし何をするにしても入居者の合意形成が必要なマンション。うまくいくとは限らないようです。
自分が先に逝くか、それとも…〈年金18万円〉81歳のおひとり様、雨漏りの天井を見つめ絶望「こんな結末を迎えるとは」 (※写真はイメージです/PIXTA)

最期までいるつもりでも大規模修繕や建て替えはNO…「老いるマンション入居者」の実態

――生活ぶりは、可もなく不可もなく

 

毎月の生活費は、男性の年金月18万円(手取りでは16万円ほど)で賄っているといいますが、「そもそも、この年になると最低限のお金しか使わないから」と男性。孫もちょうど大学を卒業し、社会人に。「もう、ジジイがお小遣いをあげる年齢じゃない」といい、毎月の年金もあまる状況だといいます。

 

家計としては余裕はあるものの、空室も目立つ築50年のマンション、修繕となると積立金ではとても足りず入居者のプラスαの出費は避けられません。また建て替えという話も出ていますが、多くの入居者が反対しています。

 

――寿命が尽きるまでここにいるつもりだけど、それが明日かもしれない。それで建て替えは考えられない

――いつまでここに入れるか分からない。それでお金をさらに出して修繕は……

 

高齢者ばかりのマンションだからでしょう。未来の話を積極的にする人は誰一人といないのです。

 

――家族との思い出も汚れていくようで……せめて、雨漏りだけでも直せたら

 

一度、見てもらったものの、雨漏りの原因はこの部屋だけにあるわけではなく、マンション全体の問題だということが分かったといいます。つまり、男性ひとりだけでは、どうすることもできないのです。

 

――こんな結末を迎えるなんて、思ってもみなかったよ

 

とポツリ。50年前、家族との未来を思い描いた日々を想います。ボロボロの実家をみて「父さん、うちに来なよ。子ども(男性の孫)たちの部屋も開いているし」と子どもらは同居を提案してくれます。しかし、いまさら他の家に住むことは考えられない……雨漏りで茶色のシミができた天井を見るたび、どうすることもできない絶望感に襲われるといいます。

 

今後、築年数40年以上のマンションが急増していくなか、老いるマンションに取り残される高齢者たちも同じだけ増えていきそうです。

 

[参照]

国土交通省『令和5年度マンション総合調査』