社内コミュニケーションにおいて、相手のことを理解するための“聴く”能力が重要です。新人指導をする際には「傾聴」と「質問」の二つの聴くテクニックを活用することで、円滑なコミュニケーションが可能になります。JMAM「基本能力研究会」の著書『新人指導の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)より、詳しくみていきましょう。
言葉は真実を伝えているとは限らない…対人関係で相手の心を開き、信頼関係を構築するために効果的な〈接し方〉 

「聴く」は2つの意味をもつ

一方的に何かを教えるより、質問を投げかけ、相手の気づきをうまく利用しながら教えていくと、理解がスムーズになるばかりでなく、教えられたほうもやる気が出るものです。

 

こうした教え方の手法を、「コーチング」といいますが、コーチングの手法は、今日、ビジネスの幅広い場面で取り入れられています。

 

この手法で、特に重要となるのが「聴く」です。話すことが情報提供のスキルだとすれば、聴くことは情報収集のスキルであり、相手を認め、受け入れるという重要な働きかけの手段です。相手の知識はどれほどか、やる気はどうか、期待される答えはどのようなものかなどを知り、相手に合った最適なアプローチをするには、「聴く」姿勢がとても重要になるのです。

 

「聴く」姿勢には、2つの意味があります。

 

1つは、相手の真意を理解しようとして、話に耳を傾けるという意味です。自然に聞こえてくる“聞く(hear)”と区別し、理解しようとして“聴く(listen)”ことをいいます。

 

もう1つは、より積極的に相手を知るために尋ねる、質問するという意味での“聴く(ask)”をいいます。つまり、聴く技術には、「傾聴」と「質問」という2種類のスキルがあることになります。

 

これらを区別して意識的に使うことで、みなさんは新人の情報を収集し、相手の立場・状況を認めて指導することができるようになります。