伝わらないのは「伝え方」の問題
新人を指導する場合に限らず、対面コミュニケーションで、「伝えたいことを伝える」手段の中心になるのが“話す”です。「自分は話すのが下手だから、教えるのが下手だ」と落ち込む必要はありません。話し方や使う言葉に少し注意するだけで、おおいに違ってくるものだからです。
話し手と聞き手の間には、いくつかのフィルターがあります。たとえば、知識や経験、立場の違い、相互の信頼の度合い、好き嫌いの感情などがそうです。よい話し手は、相手との間にあるフィルターを的確に把握して、相手に理解できるように話ができる人です。
たとえば、「まず、相見積りを取るように」と指示しても、「相見積りって何だろう」と新人の思考がそこでストップしてしまったら、その後のあなたの話が頭に入ってこないでしょう。
ビジネスでは、正確に伝えることがもっとも大切です。新人を指導する際は、つぎのことに留意してください。
留意点① 使う言葉を選ぶ
専門用語や職場用語は、相手に合わせて翻訳する必要があります。教える側が「知っていて当然」という態度で使ってしまうと、教わる側はその用語の意味について質問しづらいものです。
留意点② 正確な表現を心がける
たとえば、「もう少し早く」のような表現は、受け止め方が人それぞれで、軽く受け流す人もいれば、必要以上に深刻に考える人もいます。このようなあいまいな表現で指示を出されたのでは、新人も求められた動きをとりづらくなってしまいます。何を求めているかを正確に表現するように心がけましょう。
正確な表現を行うコツは、実例を引用したり、データを示したりして、より具体的に表現することです。コストや時間、仕事量などの目標を与える場合も、数値化して示すのが基本です。
留意点③ 話す限界を認識する
微妙な動きや複雑な内容を言葉だけで伝えるには限界があります。話して伝えられることには限界があることを認識したうえで、「どうすれば、もっとよくわかってもらえるだろうか」と考えることが大切です。
具体的には、ノンバーバル・コミュニケーションや図表、映像など、他の表現手段を効果的に取り入れるとよいでしょう。
留意点④ 相手の理解を確かめる
話した内容が正確に相手に理解されているかどうかは、話した内容を何回かに区切って、質問し確認することによってわかります。「ここまで理解できた?」と、イエス・ノーで答えさせるだけではなく、話した内容の要点を簡潔に答えさせましょう。