自由に生きているイメージのフリーターですが、誰もが好き好んでフリーターという働き方を選んでいるわけではありません。その8割が経済的に困窮し、多くが正社員になりたいと考えています。一方で、フリーターでも「経済的に余裕」と言い切る人も。どんな人なのか……その一例をみていきましょう。
親が死んでも生活保護があるし…月収5万円〈フリーター歴35年〉〈親の年金頼り〉の55歳・ひとり息子、余裕が一転、狼狽のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

親の年金月25万円を頼りに暮らす55歳フリーター、「生活保護」に関しての勘違い

大学卒業は、バブルが弾けて今後が不安視される1990年代前半。ただ大卒就職が厳しいと騒がれる前夜で、就職活動をきちんとしていれば、内定がもらえるころだったといいます。しかし「社会の歯車になるのはイヤだ」と就職を拒否。あえてフリーターの道を選んだといいます。

 

そんな男性に対し、親は「大学まで出たのに……しっかりと働け!」と叱責。しかし「そんなの関係ないし」と、耳を貸さず、定職につかずふらふら。40歳を過ぎたころには「お金がない」と実家に戻り、最近はスポットバイトをして月5万円ほどを稼ぐ程度だとか。それでも「経済的に余裕」というのは、両親の年金で暮らしているから。その額、月25万円。これで家族3人が暮らしています。

 

――俺らが死んだらどう生きていくんだ!

 

30年前と同様に息子を叱る親。対し男性は、「生活保護があるし。最悪、働かなくても大丈夫でしょ」と、なんら危機感を抱いていない様子。

 

生活保護は、「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的」とした制度。仮に男性に受給資格があったとしたら、東京23区であれば生活費となる生活扶助基準額が7万7,240円がもらえます。もし賃貸であれば、家賃分として住宅扶助基準額5万3,700円も加わり、最大、生活保護費として13万0,940円がもらえます。もし収入があれば、その差額が支給。たとえば月収(手取り)5万円だとすると、最大8万円ほどがもらえるというわけです。

 

しかし、男性は知らないのか、生活保護は困窮していれば誰もがもらえるというわけではありません。生活保護は「資産」「能力」「あらゆるもの」を活用し、それでも生活が困窮していると認めらえればもらえるもの。「能力」というのは「働けるかどうか」ということ。意思があろうがなかろうが、男性は働くのには問題はなさそうなので、生活保護を申請したところで、「まずは働いてください」と却下されるでしょう。

 

――はぁ、じゃあ、どうやって生きていけばいいんだよ

 

生活保護を受ければいい……あまりに短絡的な考えが、現実的ではないことを知り狼狽する男性。せめてもの救いは、事前に生活保護の支給条件をきちんと知ることができたことかもしれません。

 

[参照]

株式会社マイナビ『フリーターの意識・就労実態調査(2024年版)』

厚生労働省『生活保護制度』