現在、多くの企業が採用している「60歳定年」。その半年ほど前に、再雇用で働き続けるかどうかの意思確認があります。このとき、60歳以降も働き続けるか、それとも引退するかで、65歳から受け取る年金にどれほどの差がでるのでしょうか。考えてみましょう。
月収53万円の59歳・大卒サラリーマン…60歳〈定年退職〉or〈再雇用〉で差がつく、老後の年金受取額「たった5年で、こんなに増えるとは」 (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳定年企業は6割超…9割弱が現役続行を選択

厚生労働省『令和5年高年齢者雇用状況等報告』によると、65歳までの雇用機会確保の義務化にあたり、「定年制の廃止」を行った企業は3.9%、「定年の引上げ」を行った企業は26.9%、「継続雇用制度の導入」を行った企業は69.2%でした。

 

「定年引上げ」は中小企業が27.7%に対して大企業は17.4%、「雇用継続」は中小企業が68.2%に対し大企業が81.9%。中小企業のほうが人材不足が深刻であることが、この対応の差からも分かります。

 

企業における定年制の状況をみていくと、「60歳定年」が66.4%、「61~64歳定年」が2.7%、「65歳定年」が23.5%、「66~69歳定年」が1.1%、「70歳定年」が2.3%。また「60歳定年制」企業において、87.4%の社員が継続雇用を希望。「継続雇用を希望せず、定年退職を迎えた」社員は12.5%でした。ちなみに「継続雇用を希望するも、継続雇用されなかった社員」は0.1%いました。

 

大学を卒業してからサラリーマンをやっているのであれば、40年弱も働き続けていることになります。その間、もちろん楽しいことも色々あったものの、どちらかといえば苦労のほうが多かったことでしょう。60歳の定年をひとつの区切りに、「現役を引退したい」「リセットしたい」と考えるのが本音かもしれません。

 

しかし実際には9割弱ものサラリーマンが「60歳以降も会社で働かせてください!」といっています。その理由のひとつが、年金の受給年齢。日本の老齢年金の支給は原則65歳。60歳で仕事を辞めると、不労所得があるという一部の人を除いて、65歳までの5年間は無収入になります。60歳から65歳まで繰上げて年金を受給する制度もありますが、その分、年金受給額は減額となり、しかもその金額は一生続くことになります。

 

60歳定年で仕事を辞めたら、基本的に貯蓄を取り崩して、年金受給年齢まで待つ。その間、どんどん貯蓄が減っていくのを眺めながら暮らしていく……考えるだけで、胃がキリキリしそうです。それであれば「年金をもらえるようになるまで働くか」と考えるのは、普通のことだといえるでしょう。