公務員と会社員。平均給与にはそれほど大きな差はありませんが、マイホームの購入においては「公務員が有利」という場面に遭遇することも。一方で、住宅ローンの返済に行き詰まる公務員カップルも珍しくないといいます。みていきましょう。
銀行「全額、貸せますよ」…世帯年収1,000万円「2人とも公務員の安泰夫婦」、都内8,000万円・新築マンションをフルローン購入も自滅 (※写真はイメージです/PIXTA)

世帯年収1,000万円の会社員夫婦と公務員夫婦、都内新築マンションを検討

またローンを組みやすい公務員ならではの落とし穴も。

 

都内の新築マンションの購入を考えている、会社員カップルと、公務員カップルがいたとします。2組の夫婦はどちらも世帯年収1,000万円。そして購入を検討しているマンションの価格は8,000万円。昨今の不動産価格の高騰のなか、それでもお値打ちの価格です。

 

住宅購入の際に考えたいのは、まず「年収倍率」。世帯年収に対して物件価格は何倍か、というもので、適正値は5~7倍とされています。もうひとつが「返済負担率」。年間の返済額が世帯年収に対して何割かというもの。その上限は30~35%といわれていますが、上限に近いと家計は苦しく、20%前後であれば健全な家計のなかローン返済を進められるといわれています。

 

前述のマンション、年収倍率でいえば8倍となるので、少々背伸びをしなければならない物件だといえます。返済負担率で考えるなら、月16万円程度の返済であれば十分ということになります。

 

融資金利を0.5%、返済期間は30年、返済方式は元利均等とすると、借入可能額は5,347万円。2,600万円ほどの頭金を用意すればお目当ての新築マンションも具体的に検討段階へと進んでいけるというわけです。ただ公務員、しかも、夫婦ともに公務員という、最強の安定カップルの場合は、銀行の反応が違います。

 

銀行「お2人なら、年収倍率10倍でも大丈夫ですよ」

銀行「お2人なら、フルローンでもいけますよ」

 

「ぜひ、私たちの銀行でお借りください!」と積極的な営業。フルローンは頭金を入れずに物件価格の全額を金融機関からローンで借り入れてまかなうこと。つまり8,000万円全額借りられることになります。先ほどの条件と同じであれば、月々の返済額は24万円ほど。返済負担率29%近くになり、家計は結構厳しいという状態になります。

 

それでも通常であれば住宅購入に向けて、頭金を貯める期間が必要になりますが、フルローンであればそのような期間は必要なく、買い時を逃さないというメリットも。また手元にキャッシュを残しておける安心感もあります。

 

最強の安泰カップルと称される公務員夫婦の場合、金融機関からの甘い言葉もあり、ついつい身の丈以上のローンを組んでしまうことも珍しくありません。想定通り、夫婦ともに勤め上げることができれば問題はありませんが、病気をしてしまったり、親に介護が必要になったりと、想定外の出来事も。安定の両輪走行が片輪走行になった途端、公務員であってもあっという間に「ローン滞納」→「ローン破綻」に陥るわけです。

 

公務員夫婦の場合、ついつい借入額が大きくなりがち。借り過ぎで返済が苦しくならぬよう、「借りられる金額」と「返すことのできる金額」は違うことを再確認し、身の丈に合った返済計画を立てることが重要です。

 

[参照]

総務省『令和5年地方公務員給与実態調査』