2. 株式では「チャート分析/リスク管理」の知識を活用しなくなる人が多い
次のグラフは、株式に取り組んでいる人の結果を集計したものです。
開始前後で順位変動はなく、1位は「経済・金融ニュース、市場動向」で開始前58.1%/開始後57.6%でした。2位以下とは20%以上の差があり、株式では経済・金融の知識が非常に重視されることが分かります。また、開始前後での減少幅も0.5%と非常に小さく、実用的な勉強内容といえるでしょう。
2位は「チャートの見方・分析方法」で開始前43.4%/開始後32.3%、3位は「リスク管理・ポートフォリオ」で開始前37.4%/開始後28.3%となっています。株式ではチャート分析やリスク管理が重視されるものの、減少幅が11.1%/9.1%と大きく、うまく活用できていない人が多いようです。
続いて、株式への投資開始後に活用していることの上位3位をピックアップして、投資の経験年数別に集計したグラフです。
「経済・金融ニュース、市場動向」が経験年数に関わらず高い割合を示しています。1年未満から3年〜5年未満にかけて緩やかな下落も見られますが、5年以降は大きく割合が上昇しており、10年以上では64.2%という非常に高い割合です。
「チャートの見方・分析方法/リスク管理・ポートフォリオ」は、1年未満が非常に低くともに13.3%となっています。これが1年以上の経験を積むと大きく上昇し、ピークとなるのは「チャートの見方・分析方法」が5年〜10年未満で45.2%、「リスク管理・ポートフォリオ」が3年〜5年未満で36.1%です。
特にチャート分析に関しては、経験年数が1年〜10年未満の中級者は経済・金融に関する知識とともに重視されているといえるでしょう。ただし、10年以上とより長い経験を積んでいくと、チャート分析よりも経済・金融の知識中心の投資へと移行していくようです。
【参考情報】株式における年代別特性とその影響
以下のグラフは、投資開始後に活用していることの上位3位を回答者の年齢別に集計したものです。
「経済・金融ニュース、市場動向」については、基本的には年齢に関わらず高い水準を維持しているといっていいでしょう。これに対して「チャートの見方・分析方法/リスク管理・ポートフォリオ」は、年代が上がるとともに、割合が下がっていく傾向がうかがえます。
株式投資では、20代・30代は経済・金融の知識チャート分析/リスク管理をバランス良く活用しているのに対して、40代以上は経済・金融の知識を重視する傾向が見られ、60代以上はこの傾向がより強まるといえそうです。
なお、本調査では、株式の経験年数が10年以上の人(81人)のうち、60代以上が43.2%を占めるという結果も出ています。ひとつ前のグラフにおいて、経験年数が10年以上の「チャートの見方・分析方法/リスク管理・ポートフォリオ」の活用割合が下がった要因は、この年代構成にあると考えられます。
3. 投資信託は経験年数5年~10年未満に「金融商品知識/リスク管理」の知識を活用する機会が増える
次のグラフは、投資信託に取り組んでいる人の結果を集計したものです。
投資信託では、他の投資方法と比較して全体的に割合が低くなっており、開始後の「該当なし」も30.8%と高い割合です。これは、プロに運用を任せるという投資信託の仕組みが影響していると考えられます。
開始前後ともに1位となったのは「経済・金融ニュース、市場動向」で、開始前48.5%/開始後49.0%でした。0.5%とわずかながら開始後の方が高い割合となっており、経済・金融に関する知識を学んだ人の多くが、それを活用できていることがうかがえます。2位以下との差も大きく、投資信託の運用においてはまずは経済・金融の知識を身に付けることが有用といえそうです。
2位以下は差が小さく、順位変動も発生しています。2位は開始前後ともに「金融知識」ですが、3位は開始前が「チャートの見方・分析方法」なのに対し、開始後は「リスク管理・ポートフォリオ」でした。売買をプロに任せる投資信託では、チャート分析や取引手法はあまり必要とされないのかもしれません。
続いて、投資開始後に活用していることの上位3位をピックアップして、投資の経験年数別に集計したグラフです。
投資信託では、1年未満が高い割合となっていますが、1年〜5年未満にかけては割合が低下する傾向が見られます。その後、5年〜10年未満には割合が大きく上昇し、10年以上になると再び低下するという流れです。
「経済・金融ニュース、市場動向」は概ね高い割合を維持していますが、「金融商品/リスク管理・ポートフォリオ」が5年〜10年未満に大きく跳ね上がってから、10年以上に再び大きく低下しているのが特徴的です。
この結果からは、基本的に長期スパンの運用となる投資信託では、運用開始当初に銘柄を選定して以降、しばらく経過を見守るだけになるケースが多いことが推測されます。また、5年〜10年未満のタイミングでポートフォリオを調整する人が多く、商品やリスク管理に関する知識を活用する機会が大きく増えている可能性があります。
【参考情報】投資信託における年代別特性とその影響
以下のグラフでは、投資開始後に活用していることの上位3位を回答者の年齢別に集計しています。
いずれも20代〜50代では概ね横ばいの推移をしていますが、60代以上になると大きく下落する傾向が見られます。この傾向は「金融商品/リスク管理・ポートフォリオ」で顕著で、ともに40代で35.0%となりますが、60代以上では15.9%/9.1%と半分以下まで下落しています。
投資信託は、長期的な資産形成を目的に行われることが多く、60代以上になってから本格的に取り組む人が少なくなると考えられます。60代以上において活用割合が下落するのは、このことが影響していると考えられます。
なお、本調査では、投資信託の経験年数が5年~10年未満の人(44人)のうち60代以上は18.2%なのに対し、投資信託の経験年数が10年以上の人(55人)のうち60代以上は40.0%という結果も出ています。ひとつ前のグラフにおいて、経験年数が10年以上の「金融商品/リスク管理・ポートフォリオ」の活用割合が大きく下がったのは、このことが要因のひとつになっているといえるでしょう。