年齢と共に給与が上がっていくサラリーマン。ただなんでもピークがあるように、通常、定年を機に大きく給与は減少します。なかには「給与減に耐えられない!」というケースも。そこで活用したいサポート制度も。ところが、しっかりと制度の内容を理解していないと、実は損をしていることに気付かない場合も。みていきましょう。
年金含めて月32万円・60歳の再雇用サラリーマン、給与大幅減も余裕の笑みだったが…日本年金機構からの手紙で知る「年金支給停止」の驚愕事実に涙 (※写真はイメージです/PIXTA)

高年齢雇用継続基本給付金+年金の繰上げ=年金支給停止

定年で減少した収入をカバーする方法として、「年金の繰上げ受給」を利用する手も。これは原則65歳から受け取る老齢年金を60~65歳の間で受け取ることのできる制度。ただし1ヵ月早めるごとに0.4%年金は減らされ、最大24%の減額。その減額率は一生変わりません。

 

仮に65歳から月17万円の年金がもらえるはずのサラリーマンがいたとしましょう。60歳まで繰り上げると、年金は月14.2万円ほどに。これが一生涯続くことになります。

 

また繰上げ受給した後は取消しすることはできず、「やっぱりやめた」と途中で取り消すことはできません。さらに繰上げ受給すると、国民年金の任意加入や、保険料の追納はできなくなります。

 

年金が減額になるとはいえ、収入の減少分をカバーし、生活を安定させるのにひと役買ってくれるはずです。

 

ここで注意したいのが、高年齢雇用継続基本給付金をもらい、年金の繰上げ受給制度を利用する場合。年金の一部が支給停止され、最高で標準報酬月額の6%が支給停止されます。

 

たとえば、

 

●基本月額(老齢厚生年金の年額を12で割った額)月10万円

●総報酬月額相当額(月給=標準報酬月額に、直近1年間の賞与を12で割った額を足した額)20万円

 

そんな60歳の再雇用サラリーマンがいます。さらに給与の大幅減で高年齢雇用継続給付金を申請したとします。

 

給付金の支給額は「20万円✕15%=3万円/月」

年金の支給停止額は「標準報酬月額 (20万円)✕6%=1.2万円〔月額)」

 

この場合、 高年齢雇用継続給付金が「3万円」、老齢厚生年金が「10万円-1.2万円=8.8万円」、給与収入が「20万円」。合計31.8万円が1ヵ月の収入となります。

 

――32万円近くもあれば、定年後も余裕!

 

そう歓喜するも、トータルで収入が多くなっていると、年金に支給停止分があることはなかなか気づくことがないといいます。その後、日本年金機構から「年金支給停止」に関するハガキが届き、ここで初めて「えっ、年金が減らされている!?」と驚愕の事実を知り、思わず涙することになります。

 

ちなみに60歳以降も働き続けることが大多数になっていることを考慮し、高年齢雇用継続給付金は2025年4月から新たに60歳に到達する人から給付率を10%に縮小。以降、段階的に廃止されることが決まっています。いずれにせよ制度についてきちんと理解したうえで、定年後の生活、自身にとってどのスタイルが都合いいのか、どれほどの収入がほしいのか、しっかりと検討することが重要です。

 

[参照]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

厚生労働省『Q&A高年齢雇用継続基本給付金』

日本年金機構『年金の繰上げ受給』

日本年金機構『年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整』