大事にならなかったのは不幸中の幸い
松本さんはトレード云々の前に、それほど大きな金額ではなかったとはいえ、教育資金に手を出したことは強く反省しなければなりません。投資は余裕資金で行うのが大前提。家庭のお金を勝手に引き出したことも、家族の信用を失う行為です。追加入金する前に奥さんが気付いてくれたのは、不幸中の幸いだったでしょう。
トレード面では、ルールなしに感覚で利食い/損切りの判断をしていたことが大きな問題でした。頼りになるのは「最近円安すぎる」といった水準感だけで、しかもその相場観に固執していたようにも見受けられます。その結果、相場観がズレはじめた途端、運用資金が一気に減ってしまったわけです。
また、人間には認知の歪みが起こりやすいため、感覚的にトレードをしていると利益確定が早くなり、損失確定が遅くなりやすい傾向があります(参考記事はコチラ)。松本さんは勝ちトレードの方が多いわりに資産が増えていなかったことからも、まさにこの状態だったと考えられます。
これは俗に「コツコツドカン」といわれる現象で、利益を出せないFXトレーダーが陥りやすいパターンのひとつ。何となくトレードをするのではなく、客観的なルールを作って丁寧にトレードに取り組むべきだったと考えられます。
FX退場者によく見られる「コツコツドカン」
FXには、さまざまな失敗パターンが存在します。例えば、以下のようなものです。
- コツコツドカン:コツコツと利益を積み上げるものの、一度の負けでドカンと大きな損失を出してしまうこと
- ポジポジ病:相場の状況に関係なく、トレードを繰り返してしまうこと
- お祈りトレード:損切りを先送りした結果、身動きが取れなくなり祈るしかなくなること
- チキン利食い:利益が減ることを恐れて利食いが早くなり、想定通りに利益を伸ばせないこと
- ハイレバレッジ:高いレバレッジをかけた取引を行い、大きな損失を出してしまうこと
- 飲酒トレード:アルコールに酔った状態でトレードを行い、判断が甘くなり失敗すること
弊社は、FXの取引経験はあるものの現在は取引をやめてしまった296人を対象に、経験したことのある失敗パターンについて調査を行いました(参考記事はコチラ)。
最も多かったのは「コツコツドカン」で38.5%、これに「ポジポジ病」が34.5%、「チキン利食い」が30.4%で続くという結果です。また、「該当なし」は11.5%にとどまっており、退場者の多くが何らかの失敗パターンの経験があることがわかります。
このように、FXでは松本さんと同じような形で悩んでいる人は少なくありません。コツコツドカンも含めて、FXの失敗パターンに悩んでいる人は、まずは自分なりのトレードルールを設定して、それをしっかり守るというところからはじめると良いのではないでしょうか。