多くの人の夢であるマイホーム。晩婚化の流れのなかで、マイホームの購入年齢は平均40歳前後となっています。以前であれば年金生活に入る前にローン地獄から脱出、というのが一般的でしたが、いまでは70代でローン完済というのも現実的です。そのようななか「住宅ローンを退職金で完済」はありでしょうか、なしでしょうか。考えてみましょう。
「退職金2,400万円」で住宅ローンを完済!月収38万円の65歳サラリーマン、現役引退後に悠々自適な年金生活を期待も、待ち受ける「老後破産」の危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

「退職金で住宅ローン完済」→「ローン地獄からの解放」に潜むリスク

都内に平均的なマンションを買った大企業勤務の40歳サラリーマン。定年以降のローン返済をどうするかは、頭を抱える問題です。

 

そこでひとつの閃き。

 

――退職金で完済してしまおう!

 

日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査』によると、大卒総合職の平均退職金は勤続38年(60歳想定)で、2,440.1万円。それに対して、60歳時点のローン残債はというと……ちょうど2,400万円ほどになる計算です。仮に60歳以降も働き、年金受給年齢となる65歳で仕事を引退。年金生活に入ったとしましょう。そのとき、ローンの残債は1,200万円ほど。そして65歳まで厚生年金に加入して働いた際に、65歳からもらえる年金は、併給の老齢基礎年金含めて19.1万円。そんな状況下で年間165万円のローン返済をするというのは、かなり非現実的といえるでしょう。

 

退職金でローンを完済すべきか、完済すべきでないのか。色々な意見がありますが、年金収入のみの状況下でローン負担を抱えるのであれば、退職金で完済したほうが懸命です。

 

――ローン地獄からも解放されて、悠々自適な年金生活が送れる

 

ただし退職金を使い果たした結果、「貯蓄もゼロ」とか「心許ない」という状況はかなり危険。長寿化が進むなか、60代を迎えてから親の介護による経済的負担が増すということは十分に考えられますし、年を重ねていくにつれ、自身の医療費・介護費も増えていきます。そうなると、年金ではまかなうことができず、老後破産も現実路線です。

 

またマイホームがそのまま終の棲家とは限りません。そのまま暮らすにしてもバリアフリーへのリフォームが必要であったり、自宅に住み続けられないなら老人ホームへの転居も視野に入れなければならなくなるでしょう。その場合、マイホームの売却資金を頼りにするのは危険。想定のように売れなかった……ということは珍しいことではなく、老人ホームでの生活もすぐに破綻してしまいます。

 

一見すると良好な返済プランも、長い道のりのなかでは行き詰まることも。考えすぎかもしれませんが、リスクを徹底して排除するのであれば、余裕すぎるくらいがちょうどいいかも。いずれにせよ、借りすぎは絶対に避けるべき選択です。