昨今、高齢者の住まいとして有効な選択肢になりつつある「老人ホーム」。入居の理由はさまざまですが、入居してしまえば安心かといえばそんなことはなく、退去を選択するケースも珍しくはありません。見学をろくにせず施設への入居を決めた女性の例をみていきます。
ごめんなさい…老人ホームで暮らす「年金15万円」強情な79歳姑、真夜中の電話でポツリと懺悔…仕方なく駆けつけた61歳嫁が目にした唖然の光景 (※写真はイメージです/PIXTA)

折り合いの悪い姑と同居も「老人ホームに入居する」の宣言と共に終了

きっかけは、姑が転倒・骨折をきっかけに要介護になったこと。それまで住んでいた賃貸マンションでの生活は不便だろうと、女性のほうから同居を提案したのだとか。

 

――長男の嫁という立場上、まったく手を貸さないのはないので。通うよりも同居したほうが楽ですし

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回家庭動向調査』によると、要介護の夫の母の主な介護者は、「施設に入所/病院に入院」が最多で32.8%。「夫のきょうだい」22.5%、「夫」16.3%、「妻」が13.2%。嫁が姑の介護を買って出るというのは7~8人に1人の水準。しかも同居までするとなると、かなり少数派といえるかもしれません。

 

同居をスタートしても、姑の嫌味は変わらず。そしてその嫌味を完全無視するのも、もはや日常。ただ、別居しているから成り立っていたその関係も、同居となると違うようで、先に音を上げたのは姑のほう。「もう耐えられない!」と、ひとりで老人ホームへの入居を決断。特に見学もせずに「老人ホームなんて、どこも一緒でしょ」「大丈夫、月15万円の年金と貯蓄の取り崩しで、あなたたちに迷惑はかけないわ」と決めてしまったといいます。

 

(女性に対して)強情な姑。一度、決めたらてこでも動きません。そして老人ホーム入居の日。一応、ホームのエントランスまで送り届けたといいますが、お礼など言うこともなく、「やっと、あんな生活から抜け出すことができるわ」と嫌味をいって入居していったといいます。

 

――ほんと、最後まで姑らしい

 

少々あきれ返る女性。しかし、入居してから2週間ほど経ったある日の夜、1本の電話。何か悪いことでも……と思い、急いで電話をとると、その向こうには姑。電話に出たものの、何も話をしない姑に段々イライラしてきた女性。思わず「こんな夜中に、何なんですか?」と少々大きな声を出すと、小さな声でポツリ「ごめんなさい」と姑。そして「帰りたい、帰っていい?」を繰り返します。理由を聞くと「この施設にいるのがツライ」と、要領の得ないことをいいます。

 

――仕方がない

 

翌日、姑がいる老人ホームへ。前回はエントランスまでだったので、中まで入るのは初めて。「落ち着いた感じで暮らしやすそう」と、第一印象はまずまず。ただすぐにそのイメージは180度変わったといいます。

 

突然どこからともなく聞こえてきたのは、大きな奇声。その奇声に呼応するかのように、廊下を歩いていた入居者も突然の大声をあげて何か訴えます。そんな光景に、思わず唖然とする女性。

 

――なるほど、そういうことか……

 

姑が帰りたいと言い出した理由が分かりました。見学もせずに決めたというこのホーム。認知症患者が多く入居する施設でした。姑は入浴や排泄などの際に介助を必要とするものの、ほかは嫌味が言えるほどなんら問題なし。そんな姑にとって、少々キツイ環境だったのは想像に難しくはありません。

 

老人ホームは種別ごとに入居できる条件が異なり、認知症患者可という施設であっても、メインは介護度の低い人が中心であったり、介護度の高い人が中心だったりとさまざま。パンフレットだけではこのような事情は把握しづらく、入居後の後悔に繋がることも。また見学の際は、施設の設備などと共に、スタッフや入居者の雰囲気をみることも大切です。

 

姑を連れて帰ってきた女性。しばらくはしおらしくするかと思いきや、その期間は数日程度。すでに嫌味な姑に戻っているといいます。

 

[参考資料]

ノマドマーケティング株式会社『嫁姑問題の実態を30代以上に主婦に調査!あるあるランキング』

国立社会保障・人口問題研究所『第7回家庭動向調査』